独創的な宇宙論を発表し続けた「車いすの天才科学者」、スティーブン・ホーキング博士76歳が死去した。博士は❝地球の未来に悲観的で「地球は、私たち自身が起こす❝人災❞危機にさらされている。生き残るには他の星に住むしかない」00年に出版した著書では「人類は今後1000年以内に災害か地球温暖化のために滅亡する。唯一の助かる道は別の惑星に移住すること」などと警告。太陽の寿命とか、気候変動とかではなく、人類自らの行いが不安らしい。❞遠い将来を悲観的に捉え、人類が生き残るために「地球外の生命体の発見」を切迫していた。核兵器が発達し、一人の間違った指導者による❝人災❞が大惨事を招きかねない。今後は人類を救う共感が、共存する世界の主課題になるかもしれません。
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その星は、明るいオレンジ色に輝いているらしい。見たことはまだない。日本では奄美大島以南でないと見られないからだ。
ケンタウルス座アルファ星。太陽系に最も近い恒星だ。とはいえ4・3光年離れ、地球上最速の機械である無人探査機「ボイジャー」でも約8万年かかる。
その恒星系を目指す超高速の宇宙船を開発し、20年で到達させる壮大な計画が今月発表された。ロシア人の富豪が資金を出し、車椅子の宇宙物理学者ホーキング博士、フェイスブック創業者のザッカーバーグ氏らが協力する。
宇宙船といっても3〜4センチ四方の小さな探査機だ。燃料は使わず、レーザー推進で飛ぶ。一辺数メートルの薄い特殊な帆を取り付け、地球からこの帆に強力なレーザーを照射する仕組みだ。光速の20%、3日で冥王星へ行ける速度を実現するとしている。
カメラや電源、通信機器などは切手大のチップとして搭載する。必要となる技術は現段階ではほとんど存在せず、その開発と確立に20年かかるとみている。
計画の目的は「地球外の生命体の発見」だ。しかし、ホーキング博士にはもっと切迫した思いがあるようだ。
調べると博士は最近、地球の未来に悲観的である。「地球は、私たち自身が起こす危機にさらされている。生き残るには他の星に住むしかない」といった発言を繰り返している。太陽の寿命とか、気候変動とかではなく、人類自らの行いが不安らしい。
「あなたが最もただしたいと思う人間の欠点は何か?」との問いかけに、博士は「攻撃性だ」と答えたという。英インディペンデント紙が昨年2月に報道した。「洞窟で暮らしていた時代、攻撃性は生き延びるうえで有益だったが、今では自らを破滅させる恐れがある」と語っている。
また、今年1月の英ガーディアン紙によると、「科学と技術の進歩で、人類はかつてない人為的な大災害の危険にさらされている」と警告した。具体的な脅威として、核兵器や遺伝子を操作されたウイルスをあげている。
74歳のホーキング博士は、壮大な計画の結果を見届けられないだろう。だが、望みを託している。移住先を探すというだけではない。この計画に人類が協力し合うことを期待しているのではないか。
インディペンデント紙には博士のこんな言葉もあった。
「人間の特質として大事にしたいのは共感だ。共感は平和に愛し合う状態を私たちにもたらす」(論説委員)