小桜姫は鎌倉時代に非業の死を遂げた姫ですが浅野和三郎の妻の守護霊となり、和三郎と交信し、霊界通信を書かせます。その中の一部ですが、姫が霊界で三浦半島の地震を止める働きをする部分です。これを読むと地元の神様も地震を止めてくださる力をお持ちということです。東南海大地震がオリンピックの前にも襲って来ようというとき必死で祈ればお蔭はあるという事が書いてあります。神奈川県三浦市三崎町諸磯にある小桜神社には今も香華が絶えません
霊界通信その六十六、三浦を襲った大海嘯(おおつなみ)
さて只今ただいま申上もうしあげました不図した動機というのは、或ある年、三浦の海岸を襲った大海嘯なのでございました。それはめったにない位の大な時化で、一時じは三浦三崎一帯の人家が全滅しそうに思おもわれたそうでございます。
すると、その頃ころ、諸磯の、或ある漁師の妻で、平常から私の事ことを大へんに尊信してくれている一人の婦人がありました。『小櫻姫にお願いすれば、どんな事でも協て下さる……。』そう思い込んでいたらしいのでございます。で、いよいよ暴風雨が荒出しますと、右の婦人が早速く私の墓に駆て一心不乱に祈願しました。――
『このままにして置おきますと、三浦の土地とちは皆な流て了しまいます。小櫻姫さま、何どうぞあなた様さまのお力ちからで、この災難を免まぬがれさせて戴きます。この土地とちでお縋するのはあなた様より外にはござりませぬ。』
丁度その時とき私は海の修行場で不相変ず統一の修行三昧まいに耽って居ましたので、右の婦人の熱誠こめた祈願がいつになくはっきりと私わたくしの胸に通て来ました。これには私も一と方かたならず驚きました。――
『これは大たいへんである。三浦は自分にとりて切っても切れぬ深かい因縁の土地、このまま土地の人々を見殺にはできない。殊にあそこには良人をはじめ、三浦一族の墓もあること……。一つ竜神さんに一生懸命祈願して見ましょう……。正しい願であるならきっと御神助が降るに相違ない……。』
それから私わたくしは未熟な自分にできる限の熱誠をこめて、三浦の土地が災厄から免れるようにと、竜神界に祈願を籠めますと、間もなくあちらから『願の趣き聴き届ける……。』との難有ありがたいお言葉が伝つたわってまいりました。
果たして、さしものに猛り狂くるった大時化が、間もなく収まり、三浦の土地はさしたる損害なくして済んだのでしたが、三浦以外の土地、例ば伊豆とか、房州とかは百年来例しがないと言われるほどの惨害を蒙ったのでした。
斯した時には又妙に不思議な現象が重るものと見えまして、私の姿たがその夜右の漁師の妻の夢枕に立たのだそうでございます。私としては別にそんなことをしようというつもりはなく、ただこころにこの正直な婦人をいとしい女性と思った丈のことでしたが、たまたま右の婦人がいくらか霊能らしいものを有っていた為に、私の思念が先方に伝つたわり、その結果、夢に私の姿までも見ることになったのでございましょう。そうしたことは格別珍しい事でも何でもないのですが、場合が場合とて、それが飛んでもない大騒になって了いました。――
『小櫻姫はたしかに三浦の土地の守護神様だ。三浦の土地が今度不思議にも助ったのは皆小櫻姫のお蔭だ。現に小櫻姫のお姿が誰某の夢枕に立ったということだ……。難有いことではないか……。』
私わたくしとすればただ土地の人達に代って竜神さんに御祈願をこめたまでのことで、私自身に何の働きのあった訳ではないのでございますが、そうしたいきさつは無邪気な村人に判る筈もございません。で、とうとう私を祭神とした小桜神社が村人全体の相談の結果として、建立される段取になって了まいました。
右の事情が指導役のお爺さんから伝えられた時に私はびっくりして了まいました。私は真紅になって御辞退しました。――
『お爺さま、それは飛んでもないことでございます。私などはまだ修行中の身、力量といい、又た行状といい、とてもそんな資格のあろう筈がございませぬ。他の事と異い、こればかりは御辞退申上あげます……。』
が、お爺じいさんはいつかな承知なさらないのでした。――
『そなたが何なんと言おうと、神界ではすでに人民の願を容れ、小桜神社を建てさせることに決めた。そなたの器量は神界で何なにもかも御存じゃ。そなたはただ誠心誠意で人と神との仲介をすればそれでよい。今更我侭を申したとて何にもならんぞ……。』
『左様な訳のものでございましょうか……。』
私としては内心多大の不安を感じながら、そうお答するより外かに詮術がないのでございました・・
霊界通信その六十六、三浦を襲った大海嘯(おおつなみ)
さて只今ただいま申上もうしあげました不図した動機というのは、或ある年、三浦の海岸を襲った大海嘯なのでございました。それはめったにない位の大な時化で、一時じは三浦三崎一帯の人家が全滅しそうに思おもわれたそうでございます。
すると、その頃ころ、諸磯の、或ある漁師の妻で、平常から私の事ことを大へんに尊信してくれている一人の婦人がありました。『小櫻姫にお願いすれば、どんな事でも協て下さる……。』そう思い込んでいたらしいのでございます。で、いよいよ暴風雨が荒出しますと、右の婦人が早速く私の墓に駆て一心不乱に祈願しました。――
『このままにして置おきますと、三浦の土地とちは皆な流て了しまいます。小櫻姫さま、何どうぞあなた様さまのお力ちからで、この災難を免まぬがれさせて戴きます。この土地とちでお縋するのはあなた様より外にはござりませぬ。』
丁度その時とき私は海の修行場で不相変ず統一の修行三昧まいに耽って居ましたので、右の婦人の熱誠こめた祈願がいつになくはっきりと私わたくしの胸に通て来ました。これには私も一と方かたならず驚きました。――
『これは大たいへんである。三浦は自分にとりて切っても切れぬ深かい因縁の土地、このまま土地の人々を見殺にはできない。殊にあそこには良人をはじめ、三浦一族の墓もあること……。一つ竜神さんに一生懸命祈願して見ましょう……。正しい願であるならきっと御神助が降るに相違ない……。』
それから私わたくしは未熟な自分にできる限の熱誠をこめて、三浦の土地が災厄から免れるようにと、竜神界に祈願を籠めますと、間もなくあちらから『願の趣き聴き届ける……。』との難有ありがたいお言葉が伝つたわってまいりました。
果たして、さしものに猛り狂くるった大時化が、間もなく収まり、三浦の土地はさしたる損害なくして済んだのでしたが、三浦以外の土地、例ば伊豆とか、房州とかは百年来例しがないと言われるほどの惨害を蒙ったのでした。
斯した時には又妙に不思議な現象が重るものと見えまして、私の姿たがその夜右の漁師の妻の夢枕に立たのだそうでございます。私としては別にそんなことをしようというつもりはなく、ただこころにこの正直な婦人をいとしい女性と思った丈のことでしたが、たまたま右の婦人がいくらか霊能らしいものを有っていた為に、私の思念が先方に伝つたわり、その結果、夢に私の姿までも見ることになったのでございましょう。そうしたことは格別珍しい事でも何でもないのですが、場合が場合とて、それが飛んでもない大騒になって了いました。――
『小櫻姫はたしかに三浦の土地の守護神様だ。三浦の土地が今度不思議にも助ったのは皆小櫻姫のお蔭だ。現に小櫻姫のお姿が誰某の夢枕に立ったということだ……。難有いことではないか……。』
私わたくしとすればただ土地の人達に代って竜神さんに御祈願をこめたまでのことで、私自身に何の働きのあった訳ではないのでございますが、そうしたいきさつは無邪気な村人に判る筈もございません。で、とうとう私を祭神とした小桜神社が村人全体の相談の結果として、建立される段取になって了まいました。
右の事情が指導役のお爺さんから伝えられた時に私はびっくりして了まいました。私は真紅になって御辞退しました。――
『お爺さま、それは飛んでもないことでございます。私などはまだ修行中の身、力量といい、又た行状といい、とてもそんな資格のあろう筈がございませぬ。他の事と異い、こればかりは御辞退申上あげます……。』
が、お爺じいさんはいつかな承知なさらないのでした。――
『そなたが何なんと言おうと、神界ではすでに人民の願を容れ、小桜神社を建てさせることに決めた。そなたの器量は神界で何なにもかも御存じゃ。そなたはただ誠心誠意で人と神との仲介をすればそれでよい。今更我侭を申したとて何にもならんぞ……。』
『左様な訳のものでございましょうか……。』
私としては内心多大の不安を感じながら、そうお答するより外かに詮術がないのでございました・・