北畠親房は神皇正統記開巻第一に「大日本は神國なり」と書いておられます。
(神皇正統記 巻一序論 「大日本(ヤマト)は神国(かみのくに)なり。天祖(あまつみおや)初めて基(もとい)を開き、日神(ヒノカミ)長く統を伝へ給ふ。わが国のみ この事あり。異朝にはその類ひなし。この故に神国と云ふなり。・・」)これが今日大変有名な句として何時もくりかえされておる。親房卿は「萬世一系の皇統を上に戴いてゐる、これが神國である所以である、とまず説いておられます。そうして仏教にはよほど注意深く丁寧な筆の運びをしておられます。(神皇正統記には「わが神、大日(大日如来)の霊(みたま)にましませば、明徳をもて照臨し給ふこと陰陽におきて測りがたし。冥顕(冥界と顕界)につ きて頼みあり。君も臣も神明の光胤を受け、或ひはまさしく勅を受けし神達の苗裔なり。誰かこれを仰ふぎ奉らざるべき。この理を悟 り、その道にたがはずは、内外典(仏書・儒書)の学問もここにきはまるべきにこそ。されど、この道(=国体)のひろまるべき事は内外典流布の力なりと云ひつべし。魚を得ることは網の一目(いちもく)に依るなれど、衆目の力なければこれを得ることかたきが如し。応神天皇の御代より儒書を広められ、聖徳太子の御時より、釈教を盛りにし給ひし、これ皆権化の神聖にましませば、天照大神の御心を受けてわが国の道を広め深くし給ふなるべし。・・・」とあり、基本は両部神道であったと考えられます)
それから山鹿素行の「中朝事実」(日本中華論)を見ましても仏教と云うものを一応通っておられるので、我が國體の尊厳を明らかにせられる態度がはなはだ重厚であって上品に思えます。・・・
私が大乗相応の地に住む我々仏教徒には大乗相応の覚悟がいると申しましたのは、聖徳太子の飛鳥の時代から奈良、平安、鎌倉時代等の日本の歴史の各時代にあらわれた高僧方は皆この大きな覚悟の上に立って御奉公申し上げて来られた事実をはっきりと会得して我々もまたこの大日本国と大乗仏教徒の大調和の事実を深く信じて御奉公もうしあげねばならぬと思うからであります。・・大切なことは我々仏教徒自身が各々堅い信念の上に立ってこの大乗菩薩の精神を思想の上にも実践の上にも示してゆくということであります。・・すくなくともこの方向に精進する心がなければ佛教は早晩崩壊の一途を辿るほかないのであります。
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