上述の如く本宗(真言宗)は一切衆生は本有の金剛薩埵にして無量の佛徳を具すること宛も皇子の生れながらにして四海統摂の徳あるが如く、各々絶対法界体に住する秘義を明かすと共に、絶対自覚の体性を開顕する道を説くものである。
即ち小乗は一切世界は無常無我の没価値体と観たるが、大乗は諸法実相の義を説くも万有は真妄和合の生起となし、その真の方面よりいへば、存在せるものは皆真実と云ふ、汎神教的の没価値論となるも而も万有の当相は妄法有力によって縁起せしものと観、つひに個別を仮妄不実(個別の事象は仮で、真理を顕していない)として、一如の真に帰せんとするものである。
しかして密教はこの真妄を超越せる絶対真の境に立つものなるも、しかも現実生活の如何にかかわらず、ただ超越的に現実が即、絶対自覚体なりと云ふにあらず、現実即絶対自覚体なるがゆえに、この自心自覚の体を如実に体顕せんとの最高の要求、即ち修生の(修業して覚る)菩提心を起し、自心自覚の体を如實に現証する道を開設するものである。(現実が真理であるからこそ修業してそれを覚るべきとする)
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