福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

四国八十八所の霊験・・その63

2018-12-01 | 四国八十八所の霊験
・67番大興寺
67番大興寺は雲辺寺から約十二㌔下です。途中の遍路宿からは五キロくらいでしょうか。あっという間につきます。67番大興寺ご詠歌は 「うゑおきし こまつをでら ながむれば のりのおしへの かぜぞふきぬる」です。この「こまつおでら」というのは 67番大興寺の山号小松尾山からきています。67番という数字は自分にとっては深い深い因縁のある数字です。具体的には書けませんが、「遠くにありて歌うもの・・」という室生犀星「抒情小曲集 小景異情」の気持ちを痛いほどよくわからせる数字です。
 道辺の古い道標には「小松尾寺」として矢印が表示されています。遍路地図には大興寺へ入る道が2本書かれているので迷いますが、近くにきてまた地元の青年に聞くと「仁王様の正面の門から入った方がいいでしょうから、こちらの道を・・」と教えてくれました。あとでわかったのですが、裏からの道の方が近かったのです。8年前にも逆打でまわっているのですがすっかり忘れています。正門に着くとやっと昔のことを思い出します。当時は鄙びた小さいお寺の印象しかなかったのですが、なかなかどうして立派な仁王門があり、大師御手植えと伝わる楠とヒノキの大木があります。石段も堂々たるものでどうして小さい寺という印象が残っているのかわかりません。
 最初の遍路の時は、夜明け前に降っていた雨もお経を読んでいる間にすっかり上がりすがすがしい朝になりました。ここでも早朝だれもいない境内でお大師様のありがたさがひしひしと感ぜられ感涙にむせびました。
数年前には逆うちで琴弾八幡宮の雨にぬれて滑りやすくなっている落ち葉をよけつつ石段を降りて、観音寺の街中でいつものように何十回も道を聞きました。町の皆さんはだれ一人嫌な顔をせず親切に教えてくださいます。なかには「観音寺の町は分かりつ゛らいでしょう。お遍路さんによくきかれます」と言ってくださる人もいました。約9キロくらいしかないのですが、久々に歩くので緊張しながら歩きました。逆打なので多くのお遍路さんに会います。みなさんどちらからともなく挨拶します。今回は特に外人が目立ちます。外人も日本語で「こんにちわ」といいます。一人の人、数人のグループなどさまざまです。途中豊田小学校でも教員室の窓越しに道を聞きました。先生が親切に教えてくれます。あと2キロくらいのところまで来ているのですが小学校の先生は「まだ相当ありますよ」と心配そうにいいます。それだけこちらの事を心配してくれているのでしょう。
縁起によれば、弘仁十三年(八二二)嵯峨天皇の勅命で弘法大師が熊野三所権現鎮護の霊場として開創、ご本尊の薬師如来を彫刻して安置されたそうです。後に真言、天台の二宗によって管理され、真言が二十四坊、天台は十二坊あって本堂の左右に真言、天台の大師堂があったといいます。その後天正の兵火で本堂を残して他の堂塔を焼失し、慶長年間に再建されています。仁王門より、大師お手植えの楠と榧の老樹を見ながら石段を登ると正面の本堂です。
 仁王門は八百屋お七の父か恋人の吉三のいずれかが、お七の菩提を弔うために遍路となり、その途中に寄進したとも伝えられるものです。
・熊野三所権現
ここではどうしても大興寺がつくられる元となった「熊野三所権現」をお参りしなくてはなりません。石段をもとのように降りて、地図を頼りに「民宿おおひら」を目指します。地図で調べたところ熊野三所権現は「民宿おおひらの」近くとでていたのです。何度も通ったことのある大興寺のよこの薄暗い道を裏に抜けたところに「民宿おおひら」がありました。平成17年の初めての通し打ちの時はここに泊まりました。今夜はここでなく先の「青空」の泊まるので気が引けましたが、思い切ってドアを開けて尋ねました。中からおかみさんがでてきて親切に「このあたりでは、熊野権現というとあそこしかないのですがわかりずらいので一緒にいきましょう」といって案内してくれました。ついていくとなんと、さきにおまいりした大師堂のすぐ横にひっそりと二棟の小社があったのです。なんのことはないぐるっとおおまわりしてまた元へ戻ってきたのです。おかみさんに心から礼を言って、心経秘鍵と心経を社の前で上げました。ここも大興寺が管理しているのでしょうから表示でもつけていただいておくとよかったのにと思いました。本家熊野三所権現の家津御子神(本宮)は本地阿弥陀様、夫須美神(那智宮)は千手観音様、速玉大神(新宮)は薬師様です。ここもこの関係からか、大興寺のご本尊は阿弥陀如来様です。おことわりして写真を撮らせていただきました。

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