妙法蓮華経秘略要妙・観世音菩薩普門品第二十五(浄厳)・・21
二には帝釈身。
「應以帝釋身得度者。即現帝釋身而爲説法。」
「帝釋」とは具さなる梵語には釈迦提桓(或は提婆と云う)因陀羅と云。釈迦、此には能と云。提桓、此には天と云。因陀羅、此には主とも帝とも云。能く天主と作る義なり。須弥山の頂に喜見城あり。周(めぐり)千由旬、城に千の門あり。城中に殊勝殿あり。周千由旬、黄金を地として雑寶を以て厳飾せり。此れ天帝、阿修羅との戦に勝て建立せる堂なり。目連尊者、小千世界を遊歴するに、荘厳せること此殿に過ぎたるは無し。(雑阿含経)
此の殿に五百の門あり。四邊に一百の寶楼あり。一所に一萬七千の房あり。一一の房に七の天女あり。一一の天女に七の彩女あり。此の天女は悉く帝釈の正妃なり。帝釈の本身此殿の中に住して毘摩質多羅阿修羅の女(むすめ)、舎脂夫人と一處に居す。帝釈の化身、一一の妃と共に住せり。須弥の頂の四方に各の八天あり。合して三十二なり。帝釈は中央に居して三十二天の王たり。梵には忉利、此には三十三と云。昔迦葉佛の滅後に一の女あり、發心して佛塔を修理せり。其の功徳に由って今天主と成りて快楽自在なり。昔時助力せし者三十二人ありし。今皆輔臣と成るなり(浄名略疏)。大論に曰、過去に憍尸迦(きょうしか)を姓とせる婆羅門ありき。知友と共に福徳を修せるに由て命終已後皆須弥山の頂に生じて憍尸迦は帝釈となり、自餘は三十二の天と成るといへり(大智度論釋顧視品第三十卷五十六「昔摩伽陀國中有婆羅門名摩伽。姓憍尸迦。有福徳大智慧。知友三十三人。共修福徳命終。皆生須彌山頂第二天上。摩伽婆羅門爲天主。三十二人爲輔臣。以此三十三人故。名爲三十三天。喚其本姓故。言憍尸迦。或言天主或言千眼等。」)正法念誦經三十二には、帝釈・忉利の諸天子を教化せんが為に、當来の地獄餓鬼畜生等の相を現じ見せしめて、有為の諸法の苦空無常無我の理を説き聞かしめ、此の因縁に由りて當来に初二三四果を證ずと云へり。又法華の文句には、帝釈、首楞厳定に住せり。當来に成佛して無著如来と云べしといへり。(瓔珞經の第九にあり)。首楞厳定は中道の理定なり。帝釈即ち観音なること是を以て知るべし。