爾の時、釋迦如來は此語を説き已んぬ。摩掲陀國主阿闍世王は復た佛に白して言さく、
「世尊佛の言うところの如く。諸の惡しき衆生は地獄に入る。云何んが知ることを得んや。誰人か曾って見るや。復た云何んが當に餓鬼及與畜生に墮すべきを知るや。當に人天に生ずべきを並びに誰人か見るや」。爾の時、世尊は阿闍世に告げて言く。
「大王よ應當に一心に諦に聽くべし。我れ王のために説き。
王をして現前に知見することを得しめん。大王よ當に知るべし。若し人が命終せば當に地獄に墮するに十五相あるべし。當に餓鬼に生ずるに八種相有るべし。當に生畜に生ずるに五種相有るべし。當に人天に生ずるに有十相有るべし。
大王よ何等をか名ずけて正に地獄に生ずべき十五種相となすや。
一は自の夫妻男女眷屬において惡眼もて瞻視す。
二は其手兩を擧げて虚空を捫摹(もんぼ)す。
三は善知識の教に相い隨順せず。
四は悲號啼泣嗚咽して流を涙す。
五は大小便利不覺不知。
六は閉目不開。
七は常に頭面を覆う。
八は側臥して飮噉す。
九は身口臭穢。
十は脚膝戰掉(せんじょう・・ふるえる)。
十一は鼻梁欹側(いそく)。
十二は左眼瞤動(じゅんどう・・ぴくぴくする)。
十三は兩目變赤。
十四は面を仆(たお)して臥。
十五は踡身(検診・・身をかがめる)して左脇を地につけて臥す。
大王よ當に知べし。若し臨終に十五相具することあらば此の如く衆生は決定して當に阿鼻地獄に生ずべし。