春秋の時。豫譲が。范中行氏は庸人を以て待すれば庸人を以て報ゆ。智伯は國士を以て遇すれば國士を以て報ずと云し類。五羖(こ)大夫が。虞公の諌るまじきを知て諌ず。其亡ぶるを知て。先去て他国に事ふる。五代のひょう(にすいに馬)道が.一身数朝に歴事ふる。昨日まで敵たるところ。今朝は君と仰ぐ類。此等みな朋友の交りならば許るることなれども。君に事ふる道には許されぬじゃ。
支那國の諸儒は。此豫譲を多く義士と称す。五羖大夫を通て賢者と称すれども。十善の中には許されぬじゃ。
南山大師の言に。此盗戒は實徳の人も或は免れぬとある。是じゃ。まして官吏の賄賂によって。上を詐り下を虐するは。盗中の大なるものじゃ。此等の事は戒経律蔵の中に委く説いてあるじゃ。