神様に般若心経をお唱えする理由
1、お大師様の「般若心経秘鍵」の根拠。
2、聖徳太子「説法明眼論」の根拠。
3、「般若心経奉讃文」の根拠。
4、古来除災には神社に心経をあげてきたこと。
5、江戸時代では、塙保己一が34才で『群書類従』の出版を決心した時、北野天満宮に『般若心経』100巻を千日間あげて完成を祈願しています。
1、お大師様の「般若心経秘鍵上表文」に
「時に弘仁九年春、天下大疫す。ここに帝皇自ら黄金を筆端に染め、紺紙を爪掌に握って般若心経一巻を書写し奉りたもふ。予購読の撰に範って、経旨の旨をつつ゛る。いまだ結願のことばを吐かざるに蘇生(そしょう)の族(やから)道に亍(たたず)む。夜変じて日光赫赫たり。是れ愚身が戒徳にあらず。金輪御信力(きんりんぎょしんりき)の所為なり。但し神舎に詣(けい)せん輩(ともがら)は此の機鍵を誦し奉るべし。昔予鷲峯山の寧むしろ)に陪(はん)べって、親(まのあた)り是の深文(じんもん)を聞きき。豈其の義に達せざらんはまくのみ。
入唐沙門 空海上表」とあります。
2、伝聖徳太子作「説法明眼論神分品第十一」に次のようにあります。(訳文と原文を載せておきます)
「問、修法時「神分」といって神に般若心経を唱える理由如何?
答、修法時「神分」といって般若心経を唱えるには五つの理由がある。
一、勧請神分といって、悟っておられる神・悟っておられない神等の諸神を勧請し奉るため。
二、除障神分といって、守護神の念力によって天魔の障碍を除くため。
三、顕本神分といって、修善の力によって本地仏を顕し威光を倍増するが故なり。
四、和合神分といって、本地・垂迹の神仏の和合に依って現在・将来の悟り・所願成就を満足するため。
五、供養神分といって、以上の四種によって諸天竜神等をして喜ばしめて供養礼拝讃嘆するためである。
問、この五種の神分としてなぜ般若心経を唱えるのか?
答、六天の魔王は迷いの六道を輪廻する衆生を増やそうとしている。故に人が善心を発し仏事を修すると三界を出ることとになり、迷いの三界を輪廻する衆生の数は減ることとなる。是のため魔王は仏事を修するところにでてきて障碍をなすこととなる。しかし仏は般若心経で「無眼耳鼻舌身意、無色声香味触法」と説かれている。魔王は、般若心経を聞き「仏すでに六根六識六境無しとときたまふ。吾何者か障碍せん」という念を起こし、魔王は自分の宮殿に退帰することとなる。このとき善神は、歓喜して法味を聴受し、三宝力を得て施主を守護することが可能となるのである。
・・」
(原文
神分品第十一
此について五種の別あるべし。
一、勧請神分 必ず須く権実の諸神を勧請し奉るべきが故なり。
二、除障神分 守護神の念力によって天魔の障碍を除くべきが故なり。
三、顕本神分 修善の力によって本地を顕し威光を倍増するが故なり。
四、和合神分 本跡の和合に依って二世の悉地を満足すべきが故なり。
五、供養神分 以前の四種によって諸天竜神等をして喜ばしめて供養礼拝讃嘆するがゆえなり。
問うて曰く、五種の神分何が故にか般若心経をもちふるや。
答えて曰く、設ひ何の経をもちふとも別して一経を指さば、この難定んで来るべし。中について般若の妙理を用ふるにその深心あり。その深意とは、六天の魔王、三界の衆生の数を減ることを、歎じて種種の方便をめぐらせて衆生をして六道を輪廻せしめんと擬す。故に人にして善心を発し仏事を修するものは、必ず三界を出つべし。三界を出ては必ずその数減ずべし。是を以って仏事を修するのところにおいてその障碍を成ず。如来このことを悲しみて方便して無限耳鼻舌身意と説き無色声香味触法と説きたまふ。魔民この説を聞きて深く禁忌をなして自ら念言す。仏すでに六根六識六境無しとときたまふ。仏は是三達の大聖、不妄語の真人なり。如来十八界無しと説きたまふ。吾何者か障碍せんと。この念をなすとき、魔王三業柔和にして本居の宮殿に退帰す。このとき善神、歓喜して法味を聴受し、三宝力を得て施主を守護したまふ。)
3、「般若心経奉讃文」
抑も般若心経と申す御経は、文字の数僅か二百六十余文字なれど釈迦御一代の経即ち天台経、毘慮舎那経、阿含経、華厳経、方等(注1)、般若、法華経等一切七千余巻より選み出されたる御経なれば、神前にては寶の御経、佛前にては花の御経、況して家の為、人の為には祈祷の御経なれば声高々と読み上ぐれば上は梵天・帝釈・四大天王・日本国中大小神祇・諸天善神・諸大眷属に至る迄、哀愍納受して我らの所願を成就せしめ給うべし。謹んで読誦し奉る。
(注1、「方等」とは方等経といい大乗経典一般を指すとされる。)
・『三代実録』巻十二貞観八年(八六六)二月七日癸丑七日癸丑。園韓神祭。公卿向宮内省。奉祭如常。神祇官奏言。信濃國水内郡三和。神部兩神。有忿怒之心。
可致兵疾之。國司講師虔誠潔齋奉幣。并轉讀金剛般若經千卷。般若心經万卷。以謝神怒。兼厭兵疾。
『三代実録』巻十二貞観八年(八六六)二月十四日庚申十四日庚申。神祇官奏言。肥後國阿蘓大神懷藏怒氣。由是。可發疫癘憂隣境兵。勅。國司潔齋。至誠奉幣。
并轉讀金剛般若經千卷。般若心經万卷。大宰府司於城山四王院。轉讀金剛般若經三千卷。般若心經三万卷。
以奉謝神心消伏兵疫。