サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』の村上春樹訳のThe Catcher in the Ryeを読んで、その次にこれを読んだ。
やはり若い頃に2作とも読んだのだった。
というのも、当時から「赤頭巾ちゃん気をつけて」は「ライ麦畑でつかまえて」にそっくりだと言われていたから。
確かに文体というか、流れというか、グダグダ言う高校生の若者という設定も似ている。
両方とも1分の出来事に間に、10分も30分もの思い出す部分が入り込むのも同様。
今回も酷似しているのは確認できた。
でも、赤頭巾ちゃん気をつけて / 庄司薫の主人公はなんだか明るいし、最後はハッピーエンドな感じ。
グダグダ言うけれど、ライ麦畑はちょっとひねくれててネガティブ。
赤頭巾ちゃんは、庄司薫の恐らくは実話に近い。
都会に生まれ育って、日比谷高校でああだこうだがあって、東大闘争で入試が延期になって、大学に行かないと言い出すストーリーだが、
実際、庄司薫は日比谷高校から東大に行っている。
読んでいると、都心のかなりのぼんぼんぶりがちょっと嫌みかな。世界が違うというか。
実際も三省堂の専務の息子で、東池袋育ちだからぼんぼん。
でも青春感はこちらの方がしっくりくる。まあ、東京だしね。
ライ麦は最後はマンハッタンが舞台だし、赤頭巾は最後が銀座なのも設定が似てるし、同じく幼い妹と、見知らぬ少女が重要なシーン有り。
赤頭巾ちゃんにこんな文章がある。「中村紘子さんみたいな若くて素敵な女の先生について優雅にショパンなど弾きながら暮らそうなんて
思ったりもするわけだ。」
この赤頭巾ちゃんの5年後に本当に二人は結婚している。
中村紘子さんのwikiのエピソードには、「庄司薫の「赤ずきんちゃん気をつけて」の中に中村紘子の名前があると聞き本を読んだとき、「カバーについていた小さな写真を眺
めながら、あ、私この人と結婚するな、って確信しちゃった」とあり、その後、自分からモーションをかけたことを書いている。」だそうだ。
小説に書いたら、現実になってしまったという面白い話。
まあ、サリンジャーよりも庄司薫の方が面白かったな。
しかし17歳ぐらいの時って、こんなにグダグダ考えていたんだろうなあ。