俺は、お揚げの袋を掴んで持ち上げた。
しかし、オババは俺が持ち上げたお揚げの袋を、俺が持っているにもかかわらず、右手で掴んで引っ手繰ろうとした。
俺はオババに言った。
「 何をするんですか!」
「 うるさい、クソガキ!」
「 えっ・・・?」
そして、オババは俺を睨み付けて厚かましくも言った。
「 わたしのお揚げをどうする気だい!」
俺は、オババの言葉に“ムカッ!”と来て強く言った。
「 違います!
これは俺のです。
俺が先に掴みました。」
「 何、言ってるんだ。」
「 俺が先に掴みましたよっ!」
「 何、言ってんだい、このクソガキは!
あんた、頭、おかしいんじゃないの!
わたしの方が先だよっ!」
お揚げの最後の一つを巡って、俺とオババの争奪戦が始まった。
「 これ、俺のです。」
「 何、言ってんだい。
ホント、頭の悪そうなガキだこと!
こりゃ、わたしの物だよ。」
「 これが無いと困るのです。」
「 うるさいねぇ~。
わたしゃ、お揚げがいるんだよ。」
「 どうしても、いるんです。」
「 わたしゃ、これを買うためにわざわざ遠いところから来たんだよ。」
「 これが無いと立場がないんです。」
「 おまえの立場なんて、わしゃ知らんよ!
わたしゃ、お揚げを食べないと、心臓の発作が起こって死んでしまうよ。」
「 元気そうに見えますけど・・・。」
「 わたしゃ、心臓が悪いんだ。
もう先は長くないと言われているんだ。
心臓には、お揚げが一番効くんだよ!」
「 いや、まだまだ、現役のように見えますが・・・・。」
「 うっ!」
☆HOMEページに戻る。
HOMEページ