大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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☆(  しづめばこ P574 )                          

霧の狐道71

2008-06-16 19:19:38 | E,霧の狐道
 俺は、お揚げの袋を掴んで持ち上げた。
しかし、オババは俺が持ち上げたお揚げの袋を、俺が持っているにもかかわらず、右手で掴んで引っ手繰ろうとした。
俺はオババに言った。

「 何をするんですか!」
「 うるさい、クソガキ!」
「 えっ・・・?」

そして、オババは俺を睨み付けて厚かましくも言った。

「 わたしのお揚げをどうする気だい!」

俺は、オババの言葉に“ムカッ!”と来て強く言った。

「 違います!
 これは俺のです。
 俺が先に掴みました。」
「 何、言ってるんだ。」
「 俺が先に掴みましたよっ!」
「 何、言ってんだい、このクソガキは!
 あんた、頭、おかしいんじゃないの!
 わたしの方が先だよっ!」

お揚げの最後の一つを巡って、俺とオババの争奪戦が始まった。

「 これ、俺のです。」
「 何、言ってんだい。
 ホント、頭の悪そうなガキだこと!
 こりゃ、わたしの物だよ。」
「 これが無いと困るのです。」
「 うるさいねぇ~。
 わたしゃ、お揚げがいるんだよ。」
「 どうしても、いるんです。」
「 わたしゃ、これを買うためにわざわざ遠いところから来たんだよ。」
「 これが無いと立場がないんです。」
「 おまえの立場なんて、わしゃ知らんよ!
 わたしゃ、お揚げを食べないと、心臓の発作が起こって死んでしまうよ。」
「 元気そうに見えますけど・・・。」
「 わたしゃ、心臓が悪いんだ。
 もう先は長くないと言われているんだ。
 心臓には、お揚げが一番効くんだよ!」
「 いや、まだまだ、現役のように見えますが・・・・。」
「 うっ!」



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