突然、オババは、顔を俯けて息をつめた。
次に、ゴホッ、ゴホッと咳き込んで、左手を口に当てた。
でも、右手はしっかりとお揚げの袋を掴んでる。
そして、俺を上目遣いに見てガンを飛ばした。
“ オババ、眼は生きているぞ!
騙されるもんか!”
「 あっ!!」
俺は、突然声をあげて、右手で店の奥を指差した。
「 ん?」
オババは、とっさに店の奥を見た。
「 よっしゃぁ~!!」
俺は、オババの手が緩んだ隙に、お揚げを引っ手繰った。
「 あははは、オババ。
お揚げは貰った!!!」
オババは、クソッと言う眼で俺を見て、お揚げの冷蔵ケースを蹴っ飛ばした。
“ ガンッ!”
オババの下駄に蹴られた冷蔵ケースが大きな音をたてる。
そして、オババは言った。
「 あんた、月夜の晩ばっかりと思っていると酷い眼に遭うちゅうのを
知っておるか?」
「 うるさい、オババ!」
「 今晩、呪を掛けてやる。」
「 はぁ~~?」
「 夜中になったら、恐ろしいことが起こるよっ!」
「 何が起こるんだよっ!」
「 ふふふふふ、体中から、血が噴き出すんじゃ。」
「 鼻血だったら出たことあるけど・・・。」
「 そんな、生やさしいもんじゃないよ。」
「 じゃ、どんなんだよっ!」
「 体中に激痛が走って、そこらじゅうから出血するんじゃ。」
「 馬鹿か、オババ!」
「 それがイヤならお揚げを寄こすんじゃな!」
「 るせ~、ババア!」
「 死んでも知らんぞォ~。」
「 ばァろォ~!!」
「 そんなこと言ってられるのは、今のうちだけじゃ!」
「 るせ~!!」
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