俺は、爺さん二人に挨拶をした。
まず、短髪のごま塩頭でテッペンがハゲた、妙に小太りな左爺に挨拶。
「 よろしく!」
そして、生まれて数日後のヒナ鳥のように白髪がツンツン立って、痩せた鶏がらスープの右爺に挨拶。
「 よろしく!」
看護婦さんが、俺に言った。
「 田中さん、山本さんよ。」
左爺さんは名前が田中で、口の両端を上げ、俺に分かるように大きく頷いた。
“ 愛想、良さそう。”
右爺さんは名前が山本で、ベッドから首だけ上げて、俺の方を無表情に眺めながら鼻をポリポリ掻いていた。
“ ちょっと、不気味・・・。”
俺は看護婦さんに助けられ、車椅子からベッドに腰掛けた。
看護婦さんが俺の方を向いてニコッと笑って言った。
「 私、この部屋、担当してる井上です。
よろしくね。」
俺は挨拶を返した。
「 あ、よろしくお願いします。」
「 じゃ、動けないだろうし、荷物を入れておくね。」
「 はい、お願いします。」
井上さんは、俺の荷物を入り口にあるロッカーに入れた。
そして、次にコンビニ弁当の夕食とお茶をベッドの頭側にある手荷物入れの箱の上にある台に置いて言った。
「 夕食、ここ置いとくからね。」
「 はい、ありがとうございます。」
「 うん、なかなかキチンと喋れるね。」
「 エヘッ・・・・。」
俺は笑顔を返し、井上さんは病室を出て行った。
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