大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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霧の狐道147

2008-11-19 19:32:23 | E,霧の狐道
山本爺は、弁当の端にあった黄色い御新香を一切れ、サッと摘んで口に放り込んだ。

“ あらっ!?
 トンカツじゃなかった・・・。”

 山本爺は、クルッと向きを変えて自分のベッドに向かった。
俺は唖然として、去って行く山本爺の姿を眼で追った。

“ ポリ、ポリ、ポリ、ポリ・・・。”

横から見える顎がモゴモゴ動いている。
右手は持っている箸を∞の形にクルクル動かしている。
 そして、ベッドに戻って、箸を持ったまま、再び、布団を被った。
座ったまま布団を被ったので、ベッドの真ん中に布団の山が出来ている。

“ 遠慮したのかな?
 でも、箸は御新香に一直線だったよな・・・・。”

俺はせっかくトンカツを一切れあげようと決心した手前、一応、揺れている布団の膨らみに訊いてみた。

「 あの~、トンカツ、一つどうですか・・・?」

ベッドの膨らみからは、ポリ、ポリ、ポリと御新香を齧る音が聞こえるだけで返事は無い。

“ 返事無いし、まあ、いいか・・・、エヘッ!。”

 俺はトンカツを一つも取られなかったことに喜びを感じながら、トンカツから弁当を食べ始めた。
時間が遅かったせいか、俺の胃は満足そうにそれらを吸収して行った。



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