大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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霧の狐道158

2008-12-11 17:48:46 | E,霧の狐道
俺はさらに強がって、お揚げ婆さんに言った。

「 これって、夢だから、どうってこと無いよ。」
「 ふふふふふ、そうかな。」
「 じゃ、夢じゃ無いのか?」
「 金縛りって知ってるかの?」
「 聞いたことあるけど・・・。」
「 レム睡眠のときに起こる現象じゃ。」
「 これのことか?」
「 ふふふふ・・・。」
「 レム睡眠だって睡眠だから寝てるんだろ。
 じゃ、今はやっぱり寝てるんだ。」
「 そうかな。
 レム睡眠では、体は寝ているが、意識は起きているのじゃ。」
「 体は寝ているんだから、これは夢だろ。」
「 いいや、意識は起きている。」
「 体は寝ているから眼は瞑っている。
 眼を瞑っているのに婆さんを見ているってことは、夢の中で婆さんを見て
 いるってことだろ。
 意識が起きているって、夢の中で起きていると思っているだけだよ。
 こんなの眼が覚めたら終わりだよ。」
「 夢の中で、ビフテキを食ってても、眼が覚めたら、不幸のどん底ってこ
 ともあるわな。
 夢の中で悲しんでいても、眼が覚めたら楽しく遊びに行く日かもな。」
「 だから、眼が覚めたら終わりだってことだろ。」
「 そうさな、夢とは不思議なものよな。
 夢の中で夢とは気付かず、夢の中で夢を見ることもあるわな。
 夢の中で起きていると思っている人間が、眠りについて夢を見ていること
 もある。
 夢から覚めたそいつは夢から覚めたと言う夢を見ていることもあり得るわ
 な。
 そして、そいつだってその夢から目覚めなければ、それが本当にあったこ
 ととして夢の出来事とは気付かんこともある。」
「 俺は眼が覚めるから大丈夫だよ。」
「 でも、おまえは、今、これを夢を見ていると現実に思っているじゃろ。
 夢を見ていると思い込んでいるおまえは起きているんじゃないかの?
 バカなおまえは自分は寝ていると思い上がって、何でもないとしてええん
 かの?」
「 だから、これは夢なんだって!」
「 おまえは、思い上がった頑固なヤツじゃの。
 これもあれもそれも夢やと思ってる。
 今、見ている触っている感じている夢は、現実でないと言い切れるのかな。
 眼が覚めるだろうと思っているおまえは夢の中かどうか、おまえに判断で
 きるかの。
 この話も夢の中と言い切れるもんなんかの。」



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