病院の夜は長い。
何時間経ったのだろうか。
俺は、うるさい音に眼が開いた。
「 ぐごごごごごごぉ~、ぐごごごごごごぉ~。
くしゅ、くしゅ、ハックション、グスグス。
ズ~、ズ~、ズ~。」
眼が開いた理由は、田中爺のいびきだ。
「 う、うるさい!」
俺は布団から顔を出し、左隣のベッドに寝ている田中爺をチラッと見た。
田中爺は仰向けで口を開いて寝ていた。
“ 鼻と口から、雑音が漏れている・・・。”
俺は仰向きのまま、布団を耳の辺りまで引っ張り上げた。
布団を被っても、まだ、田中爺のいびきの音は耳に侵入して来る。
「 う、ぐぐぐぐぐ、ぐっ!
・・・・・・・・・。」
突然、田中爺は静かになった。
俺は、様子を窺う金魚のように布団から顔を出した。
顔を出すと、布団を被っていた息苦しさから解放される。
そして、口をパクッと開けて大きく息を吸い込み、吐き出す。
「 プハァ~~~。」
息を吐き出した音が消えると、薄暗い病室は静かになった。
夜の病室に静けさが広がる。
“ ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ・・・。”
廊下の方から心臓の鼓動のようなモニターが聞こえる。
“ あんな音、してたかな?
まあ、寝るときはザワザワした感じだったから、紛れていたのかな?
それにしても妙に静かだな・・・。
田中爺、いびきが喉に詰まった死んだか?”
隣のベッドの様子を見ると、掛け布団が上下しているので田中爺は生きているようだ。
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