「 主治医が手術をしたがっているから、手術を勧める電話があっても承知しち
ゃダメだよ。」
「 ああ、分かった、分かった。」
「 何だか、不安だなァ~。」
「 大丈夫だって、手術しないって言えばいいんだろ!」
「 そう、そう、ようやくホッとした。」
「 あ、それから病院まで送ってくれた人に礼を言っておいたぞ。」
「 あ、ありがと。」
「 口だけじゃなくて、現物が欲しそうだったよ。」
「 えっ!」
「 仕方がないから、物を送っておくよ。
どっちか言うと、現金の方が好きそうだったけど・・。
おまえ、もうちょっとお金の掛からない人に助けられろよな!」
「 他に誰も居なかったんだよ!」
「 ホント、金の掛かるヤツだなァ。
家は貧乏なんだから。
入院の費用も掛かってくるし・・・。」
「 仕方無いだろ、なっちゃったんだから!
じゃ、頼んだよっ!」
「 ああ、分かった、分かった。」
“ ガチャ!”
思った通りブツクサ言われた。
“ 父親の方は、これで大丈夫だな・・・。
狸小路から電話が掛かって来たとき、母親が出るとちょっと不安な気もする
が・・・・。
う~ん、でも、ま、大丈夫だろう・・・・・。”
これで一応、俺は手術は逃れられると思った。
少しホッとすると、腹が減って来る。
昼食の臭いが通路に漂って来ている。
“ あ、メシの時間だ。
部屋に戻らなきゃ。
とにかく、メシだ、メシだ!”
俺は、急いで病室に戻った。
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