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日々の出来事 12月4日 山月記 中島 敦

2018-12-04 07:00:00 | A,日々の出来事_





 日々の出来事 12月4日 山月記 中島 敦





 今日は、中島 敦が亡くなった日です。(1909年12月4日)
中島 敦は、“李陵”、“山月記”、“文字禍”、“光と風と夢”で知られる日本文学の作家です。
 中島 敦の作品は、漢文調の格調高い文体が特徴です。
これは、祖父である中島撫山が漢学塾“幸魂教舎”を開講していた漢学者で、この祖父母のもとで育てられたことが大きく影響しています。
デビュー作の“山月記”は、深田久弥の推薦により発表され、高校の教科書によく掲載されています。
 また、東京帝国大学の国文学科を卒業後、私立横浜高等女学校の教師をしていましたが、持病の喘息が悪化して教職を辞し、療養を兼ねてパラオ南洋庁へ書記として赴任します。
このとき、画家・彫刻家である土方久功と親交を深めました。
しかし、この年の僅か一年後の1909年12月4日、残念ながら気管支喘息のため33才の若さで亡くなりました。





          山月記




 李微(りちょう)は、天才としてその名が知られていました。若くして位の高い役人に任命されましたが、官職で終わってしまうのをよしとはせずに、辞して辺境の地に引っ込み人との交わりを絶ちました。李微は、詩家として死後100年に名を残そうと、ひたすらに詩作にはげみました。しかし、詩家としての名はいっこうにあがりません。詩作に絶望した李微は、生活の困窮もあって、再び官職につきました。かつての仲間たちは出世をしています。下の職にしかつけなかった李微は、自尊心を傷つけられて、ますます尊大になっていきました。李微は、公用で旅に出たときについに発狂してしまいました。わけのわからないことを叫びつつ、どこかへ行ってしまいました。

 李微の友人であった男が旅に出ます。虎になった李微に出会います。李微は一日のうちに数時間だけ人間の心が戻ると告白しました。李微は、詩を口述するのでそれを世に伝えてくれないかと友人に頼みました。友人は30編あまりの詩を筆記しました。なるほど、格調があって、一読して作者の非凡を思わせる作品でした。しかし、友人は、李微の素質が一流であることには疑いがないが、李微の作品が一流の作品になるには何かが足りないと感じました。

 口述を終えた李微は、突然に自分をあざ笑うかのような声をあげました。自分はいまだに自分の詩集が長安の風流人たちの机の上に置かれているさまを夢に見ることがあると告げました。李微は、自分の運命は当然の報いだと告白します。人間だったころに尊大だったのは、実は、臆病と羞恥心の表れであったことを告げます。才能の無さに気づくことが恐くてあえて苦学しなかったし、反面では、自分の才能を過信するあまりに人と交わることもしなかったと白状します。
 李微は、人間は誰でも猛獣使いだと言います。猛獣にあたるものはそれぞれの性格であり、自分の場合は臆病で尊大な羞恥心が猛獣であり、虎であったと告げました。李微は、この姿に成り果ててようやくにわかったと友人に告げます。自分は、その性格のために、持ち合わせていたわずかばかりの才能を空費したと語ります。世には、才能の面では自分よりも劣るが、それを絶え間なく磨いたために、堂々たる詩家となった者がたくさんいると告げます。虎に成った今になってようやくにそのことに気がついたことが、どうしようもなくやりきれないともだえました。








  中島 敦














☆今日の壺々話








 <ニュース速報> 
  「元詩人・李徴氏、虎として発見」
                ~友人が山道で発見、すぐ警察に通報


【中国・西安25日=古森義久】
 一年前、旅行中で汝水の旅館で目撃されるのを最後に行方不明になっていた、元詩人・李徴氏(当時46歳)が商於で昨日虎の姿で発見された。発見した友人の話では、昨日午前七時頃、嶺南に向かう山道を歩いていた途中、虎に襲われそうになったが、虎はすぐ隠れ、隠れた叢から人間の声が聞こえたため、まさかと思い虎に話し掛けることから、李徴氏であることを確認したと言う。

 その後、友人は数分話した後、李徴の詩を聞き移し分かれた。友人は李徴氏に自分のことを世間に明かさないよう頼まれていたが、彼と彼の家族のために警察に通報したということも話している。李徴氏の外見はすでに虎で、脳も人間より虎に近いという。
 警察庁は李徴氏が発見された山道を今日から通行止めとすると共に、近くの動物園の協力を求め李徴氏の行方を捜査する。また李徴氏が虎に変身した理由としては、友人が聞き移した詩から、詩人で成功できなかったいら立ちという心理的な理由しか今の所分かっておらず、東大生物研究所では科学的な可能性と理由を研究している。














      李陵と李徴




「 参っちゃったなァ・・・。
 俺、匈奴に捕まっちゃって、裏切り者って言われてんだよ。」
「 僕なんて、詩業への執着で虎になっちゃったんだ。」
「 ホント、参ったなァ~。」
「 う~ん・・・・、人生いろいろ~♪」
「 歌なんて歌って、これからどうすんだよ!」
「 ん・・・・。」
「 あら、何だか揺れてるね?」

グラグラグラ!

「 うわ~っ、地震だァ~!」
「 本棚から本がァ~!」

“ ドサ、ドサ、ドサ!”

「 イテテテテ!」
「 文字禍だ、文字禍だ!」
「 あ~、もう、ろくなことが無い!」
「 気晴らしに、どっか行くか?」
「 パラオなんてどう?」
「 いいねェ~、行こう、行こう!」
「 もう、やってられないやァ!
 一緒に行こうぜ!」

“ スタ、スタ、スタ・・・・・。”















       不幸な男




 ある男がバーの椅子に腰掛けて、自分のグラスを見つめていた。
そうやって30分も身動きしなかった。
 突然、でかくて強そうな男が近寄ってきて、座っている男のグラスを取り上げると、一気に飲み干した。
かわいそうな男は、それを見て泣き出した。
 強そうな男が言った。

「 なんだ、どうしたってんだよ! 
ちょっとからかっただけで泣きやがって!
おまえみたいな弱っちいヤツは死んじまえ!
俺はおまえの分まで長生きして人生を楽しむぜ!
バ~~カ!」

そう言い終わるやいなや、強そうな男はかわいそうな男を二回蹴り上げた。
 かわいそうな男は、蹴り上げられた脛を痛そうに擦りながら困惑しきった表情で言った。

「 今日は人生最悪の日だ! 
寝坊して遅刻したら会社をクビになった。
それで家に帰ろうと外に出たら車を盗まれていた。
 しかたないので、タクシーに乗ったら、クレジットカードとサイフを車内に忘れてしまった。
それから家に入ったら、妻が庭師とベッドにいるのを見てしまった。
それで、このバーに入ってきて、もう人生を終わりにしようと考えていたら、あんたが現れて、私が死のうと思って毒を入れた酒を飲んじまったんだ。」














不幸な結婚式




 自分が実際に見たわけじゃなくて、ウェディングカメラマンの友人に聞いた話なのですが、今までに見たもっと不幸な結婚式は、着々と結婚の準備を進めていたのに、当日になったら、新郎以外のお客さんが誰も来ない、新婦も来ない、というものだそうです。
 新婦さんに逃げられたとか、新郎の性格が問題で親戚にボイコットされたとかじゃなくて、結婚式の話そのものが、新郎(?)の脳内で作り上げた妄想だったそうです。
新婦は実在の女性だったけれど、問い合わせたら結婚の約束はなく、付き合っている事実もなく、怖がっていたとか。
 あとでスタッフの人達が“打ち合わせに一度も新婦が来ないから変だとは思ったが、出来ちゃった結婚だと体調の悪い新婦さんもいるから聞けなかった”と言ってたそうです。
結婚式の費用は普通に支払ったらしいです。
披露宴では新郎がカラオケを自分で歌って、写真撮影をしてもらって帰ったそうです。















ニートの外出



 ある日、中学の時の同級生から電話があった。

「 一昨日、Tが交通事故で死んだけど、一緒に葬式に行かないか?」

中学を卒業して五年。
俺と友人は地元の大学に通っていたので時々会っていたが、Tのことは一度も話題にならなかった。

「 確かに同じクラスだったけど、あいつとは口きいたことほとんどない。
ていうか、誰って感じだよ。」

俺はTが死んだと聞いても何も感じなかったし、友人もそうだろうと思った。

「 あいつ影が薄いっていうか、地味なヤツだったからなあ。
高校中退してニートやってたみたいだから、全然友達がいないらしいんだ。
そんで、Tの母親が俺の親に、親戚の手前みっともないから、友人として葬式に来てくれとか頼んできてさ。
香典は向こうで出すそうだし、ちょっとバイトだと思って行こうぜ。」
「 Tが死んで家族もせいせいしているのか、ちょっと行ってみようか。」

そんなノリで葬式に参加すると、祭儀場で晩飯を振舞われた。
 俺と友人が寿司をつまんでいると、Tの親の知人が話しかけてきた。

「 君らはT君の友人か?」
「 友人というか、同級生でした。」

俺がそう答えると、

「 じゃあ、最近のTのことはしらないんだ・・・・。」

とオッサンが言った。

「 何年も一人で部屋に籠もってたらしいが、親が注意するとバットを振り回して大変だったんだ。」

俺はTがヘタレで、いつもビクビクしていたことを思い出し、意外な気がした。

「 信じられないっすね。
中学の頃は大人しくて、ケンカとか一度もしたことなかったっすよ。」

友人がオッサンに言うと、

「 家族が寝てる最中にバットで襲ったらしい。
親父さんは意識不明で病院に運ばれて、大変だったんだ。」

俺らはそれっきり黙りこんだが、親を殴り殺そうとしたTにびびった。

「 どうして、引きこもりのTが事故にあったんですか?」

友人が興味深そうにオッサンに尋ねると、

「 それを知りたくて、君らに話しかけたんだけどね。」

と言われた。
結局、引きこもりのTがなぜ外出したのか謎だったが、“まっ、どうでもいいか”という感じだった。
 その時、世の中には生きていてもしょうがないと思われているヤツがいるんだなと思った。
他にも、そういうヤツがいっぱいいる感じがするが、多分原因不明で謎の死を遂げるような気がする。













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12月3日(月)のつぶやき

2018-12-04 02:56:04 | _HOMEページ_
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