日々の恐怖 5月18日 丹光(1)
神社で神様にお願いを聴いてもらう方法ってのを、どっかで読んだことがあったんです。
細かい内容もうろ覚えなんですが、要するに神社に覚悟も何もなく度胸も無く口先だけでお願いしても聴き入れてもらえないよ、神様に構って欲しいならそれなりの誠意をみせないとだめだよ、って記述でした。
例えば成功をしたかったら大金を奉納してみなさいとか、例えば人を呪い殺したかったら、自分の命を削れ、とか。
いきなり物騒な書き込みをしましたが、自分が当時悩んでいたのはなんてことない、彼女のご両親のご挨拶どうしよう、というありふれたライフイベントです。
でも、いくらありふれたライフイベントだろうと不安なものは不安なもので、元来の臆病な性格と、彼女の父親はだいぶアレだから、って聴かされてたのもあり、人生マックスレベルにピンチに陥ってたため、すがれるものなら藁だってなんだって頼りたいという心持ちでした。
ご挨拶の無事を祈り神社に願掛けに行く、というのは当然の帰結というやつです。
願掛けの神社に選んだのは、ややこじんまりとしていながらも恋愛成就として有名な、そして交際前に偶然の流れで二人で立ち寄ったため縁が有ると思っている神社にしました。
そして差し出すものは命、な訳なく、無難に一万円を差し出すことにいたしました。
諭吉一人が大金かと言われたらなんとも微妙な所ですが、お賽銭箱に500円投げ込むのもためらう貧乏人間としては、十分覚悟を示したと勝手な判断です。
さて早速と現地に赴き、どうかどうかご挨拶を無事に乗り越えられるように見守ってください、と人生でこれ以上ないほどの強い強い執念のこもった願掛けをすませ、社務所の神主さんのところに寄って、一万円をご奉納させてもらえませんかと伝えましたところ、若干ぽかんとされたのち、じゃあこれ持ってって、と破魔の矢をいただきました。
破魔の矢を購入という形になったことにより、これはご奉納と呼べるのか?と若干目的がぼやけた気はするのですが、ありがたく頂いておくことにしました。
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