日々の恐怖 4月24日 兄が見たもの
Kさんの祖父の家は能登の方のけっこう立派な農家だそうで、毎年お盆時期には家族総出で里帰りする。
その家の奥の仏間には立派な透かし彫りの欄間があり、Kさんとそのお兄さんはよくおじいさんから、
「 この続きの間から欄間を通して仏間を覗くと、不思議なものが見えると言われている。」
と聞いていました。
そこである日、Kさんとお兄さんが他の家族が不在の際、脚立を持ちだしてそれを決行しようとしました。
まずはお兄さんの番、ということで脚立を上り、欄間の彫刻の間から隣の仏間を覗いたお兄さんは、5秒ほど無言で覗いた後、静かに脚立を降り、それを畳んでしまいました。
不思議に思ったKさんが何度聞いても、お兄さんは無言のままでした。
結局、Kさんは覗かせてもらえいないまま、お兄さんも一言も何を見たかを話さないまま、その夏の里帰りは終ってしまいました。
後日、家に帰って来てから、Kさんがしつこく聞くと、そのお兄さんは、
「 長い白髪を垂らした老婆が、背を向けて座っているのが見えた。」
とKさんに白状したと言うことです。
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