日々の恐怖 7月1日 古物(2)
そして結局、手裏剣は叔母家の倉庫に保管されたままになりました。
当時、身内の介護で実家と往復生活をしていた叔母・叔父としても、再交付に行く時間もなかったんです。
以来5年の間に、まず叔父が怪我をしました。
自転車に乗っていて横断歩道で人とぶつかったのに、徒歩だったほうの人は無傷で、何故か叔父だけ数ヶ月松葉杖をつくほどの怪我を負いました。
次が叔父の実父。
脳梗塞で倒れました。
そして、叔母・叔父の子供が帯状疱疹で入院。
どう説明すればいいのか…。
病気怪我なんて何時だれが襲われるかわからないよ、と言われればそれまでですが、上記以外にも、まるでローテーションでも組んでいるかのように、叔父自身⇒叔父実父⇒甥っ子の3人が、代わる代わる怪我・病気になったのです。
私はピンと来ていませんでしたが、この後で叔父がついにガンになったとき、叔母が泣きながら言いました。
「 悪いけどさあ。
あんたには悪いけど、あの先輩が手裏剣持って来てから、こういうことが続くようになったんだよね。
私も長くこんな商売してるけど、こういうこと初めてで、結び付けて考えちゃいけないのかも知れないけど。」
こう言われたら、私もおだやかではありません。
何かやり切れなくて、叔母にはとにかく鑑定書再交付するか、同業者でそういったわけありの品物を引きとれる人がいるか探して欲しいと頼み、会社では先輩に対しちょっとムッとして、
「 あの手裏剣のことですが、何かいわれがありますか?」
と初めて質問しました。
すると、何でそういうことが平気で言えるかな、と思うようなことを先輩は言いました。
「 あ、あれかあ。
実はねえ、あれ、私の主人が買ったんだけど、あれを持ってる頃、私、急に息子と切ったはったの大喧嘩しちゃったり、刃物で怪我したり、主人が大病したり大変だったのよお。
あらっ、叔母さんのご家庭何かあったの?
じゃあ手裏剣のせいかも知れないわよねえ。」
もう絶句。
こんなことを、しかも笑って説明できる、言い放てる彼女の神経を疑いました。
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