日々の恐怖 3月14日 石の家(2)
興味の出た俺は、その家に入って社長たちを探すことにした。
門から入ると、母屋と荒れてはいるが広い庭。
そしてその庭の片隅には蔵が三つ並んでいた。
ちょうどそこに社長の息子の姿があったから、俺は蔵の方に歩いて行った。
社長と息子がいたのは、三つの蔵のうち真ん中の蔵。
社長はその中にいたんだけど、その蔵の中が変わっていた。
その真ん中の蔵だけ正方形で、その中央に土俵みたいに円の形で、白い石が埋め込まれてて、
そのまた円の中央に、1m真っ角くらいの黒い石の板と、直径1mくらいの白い石の板が向かい合うように立っていて、
社長はそれをずっと眺めていた。
俺は、
” モノリスみて~だなァ~、気色ワリィ~。”
としか思わなかった。
その日はその家を調査して帰ったが、数日後すぐにその家の解体を請けることが決まった。
解体初日の朝、会社に集まると珍しく社長が出てきて俺たちに言った。
「 蔵にある石の板は、絶対に傷つけずに持って帰って来い!」
と言う訳で、俺たちは現場であるその家に向かった。
木造の家屋なんて壊すの簡単なんだよ。
広い道と土地さえあれば重機で一気にやっつけちゃうんだけど、朝の社長の一言があったから、
真ん中の蔵には手をつけず、他のとこからバンバンぶっ壊していった。
それで、数日たって真ん中の蔵ぶっ壊すかとみんなで中に入ったら、いきなりリーダーのコウさん(超マッチョな中国人)が、
蔵の外へ飛び出して吐き始めたんで、俺たちが、
「 どうしたんすか?」
って聞くと、
「 あの蔵、ヤバイよ、気持ちわるいよ。」
って言い出した。
俺たちは平気だし、やらなきゃ終わらねえから仕事続けようとしたら、コウさんは、
「 ヤバイから帰る!」
って、勝手にダンプの一台に乗って帰ってしまった。
しょうがねえから俺たちだけで壊して、例の石は養生してダンプに積んで持ち帰った。
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