大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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霧の狐道160

2008-12-15 18:55:50 | E,霧の狐道
 俺は婆さんの自信に溢れた表情を見て思った。

“ コイツ、真言密教の奥儀がどうのこうのって言っていたな・・・。
 それに、普通じゃない不気味な現れ方だったし・・・。
 これって、結構、ヤバイんじゃないのかな・・・。
 このババア、変な超能力を持ってたりして・・・。
 ヤダナ、こいつ・・・。
 何とか消えてくれないかな・・・。”

俺はニタニタ笑っているお揚げ婆さんを、とにかく追い払おうと思って言った。

「 ああ、もう、分かった、分かったよ。
 婆さんがスゴイことは分かった。
 もう、話はいいよ。
 それに、今日は夜も遅いし、家に帰れよ。」
「 ダメじゃ、ダメじゃ。」
「 またの機会ってことで・・・。」
「 い~~や、ダメじゃ!
 ふふふふふ。
 これから呪文を言うから、ホント怖ろしいことが起こるのじゃぞ。」
「 怖ろしいことって、何だよ?」
「 ワシが前に言ったじゃろ。」
「 何?」
「 もう忘れたのか。」
「 う~~ん?」
「 人の話をちゃんと聞け、このバカチン!
 なら、もう一度、教えてやろう。
 ワシが呪文を唱えるとじゃな。」
「 うん、呪文を唱えると・・・。」
「 体中から、血が噴き出して、おまえは、その苦しさにのたうち回るの
 じゃ!
 ヒッ、ヒッ、ヒッ、ヒッ!!!」
「 夢の中でも、苦しいのは、やだな・・・・・。」
「 ふふふふふふ、怖ろしくなって来たじゃろ。
 でも、もう、謝っても遅いのじゃ。
 じゃ、行くぞ。
 ・・・・・・。
 ・・・・・・・。
 ・・・・・・・・・。
 ・・・・・・・・・・・。」

 お揚げ婆さんは、カエルの上で左斜め上に眼を遣った。
そして、そのままお揚げ婆さんの動きはピタッと止まった。
なんとなく、間が悪い空気が流れる。


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