大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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霧の狐道161

2008-12-17 18:59:28 | E,霧の狐道
 お揚げ婆さんは、まだ固まったまま動かない。

“ コイツ、固まってるぞ。
 どうしたのかな?”

俺は我慢できずにお揚げ婆さんに訊いてみた。

「 どうしたんだよ、婆さん?」

お揚げ婆さんは、カエルの上で左斜め上に眼を遣ったまま答えた。

「 今日は・・・、ちょっと、調子が悪いのじゃ。」
「 どう、調子が悪いのだ?」
「 呪文を忘れてしまった・・・・!」
「 あはははは・・・・。」

 お揚げ婆さんは、こちらに視線を戻した。
そして、言い訳がましく俺に言った。

「 ここに現れるための呪文を覚えるので精一杯じゃったからのォ~。
 それで、次の呪文が手薄になって忘れてしまったのじゃ。」
「 それって、バカみたい。」
「 とても難しい呪文じゃから仕方が無いのじゃ。」
「 記憶力が無いんじゃない?」
「 なにィ~~!」
「 バカチン婆さん!」
「 うるさい、このクソガキ。」
「 バカチン、バカチン!」
「 ええい、いちいち腹が立つヤツじゃのォ~。」
「 あははははは!」

俺は、ちょっと、安心した。

“ これは、たいしたことないぞ!”



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