日々の恐怖 8月9日 海の家 (5)
父親を無理矢理起こして、3人で窓からそっと覗くと、月明かりの中、骸骨が浜を歩いていた。
やたらと大きな骸骨で、表面にフジツボらしきものがびっしりついていて気持ち悪い。
それが酔っぱらいのように、フラフラと浜を歩いている。
なにかを探すかのようにうろついている骸骨を数分見ていたが、父親がガラリと戸を開けると、骸骨はその瞬間に消えた。
8月下旬、海にクラゲが出るようになる頃、父の実家のある東京へ引っ越すことになった。
残された借金も、町役場の人が紹介してくれた弁護士を通じてどうにかなった。
俺たち家族がいなくなった後、町営の海の家はなくなった、と聞いた。
その後、大きくなってから、母に人魂や海藻人間や骸骨のことを聞くと、母も、
「 何度も見た。」
と言った。
「 でも、子供たちが怖がるから、絶対に怖がる素振りは見せないようにしていた。
人魂は、何十回と見たことから、そういうもんだ、としか思わなかったよ。」
さらに母は、
「 海藻人間は夜明け近くに、海の家の前にトコブシ(小さい種類のアワビ)やヒメサザエを30粒ほど置いて行くことも何度かあった。
それ、食べちゃったけど・・・・。」
と言った。
母はそれらを普通に食卓に乗せていたのだ。
あっぱれである。
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