日々の恐怖 12月24日 エレベーター(4)
数日間は気味が悪くエレベーターに近づくのも怖かったので、タイムカードも早めにスキャンして、夜にエレベーターは使わないようにしていた。
仕事の業績も順調で、自分の能力もあがってきているのがわかってきたので、いつしかその夜の体験も忘れて、仕事に又没頭するようになった。
職場の人間には、一切その夜の体験は話さなかった。
変なやつと思われるのもいやだったからだ。
一年ぐらい経って、同業他社で修業を終えた社長の息子が、上司として着任してきた。
仕事熱心な上司で、毎日22時頃までデスクワークをこなして帰宅するのがデフォだった。
自分は建物の一階で毎日働いていたのだが、22時過ぎに、エレベーターの側にある急な真っ暗な階段を使い一階まで降りてきて、
「 ○○君、早く帰りな。」
と必ず声をかけてくれて、少しだけ立ち話をして上司が帰り、自分は仕事を続行していた。
半年近くそんな事が続いていたのに、ある頃から帰宅する上司に全く会わない日が続いた。
ちなみにエレベーターを使用して下に降りると、一階の自分の職場の裏側になる為、働いている自分は気付く事はない。
急な階段を使用すると、自分の職場の真ん前に降りる事になり、直にわかる事になる。
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