日々の恐怖 11月14日 声(1)
俺がまだ幼稚園の年中の頃の話です。
ある夜に、俺を真ん中に親父と弟とで寝ていた。
ふと夜中に目が覚めた。
小さい頃から俺は音に敏感だったから、何かが聞こえたんだと思う。
いつも豆電球をつけて寝ていたからまわりがよく見えたが、何もいなかった。
それでも何故か電球の辺りが気になって眠れない。
しばらくすると、そこからラジオのような音が聞こえてきた。
最初は、
“ 何かな・・・?”
と思ったが、上の階に中学生の姉がいたので、姉がラジオを聞いているんだと思って、また眠る事にした。
耳をすまさなければ聞こえない程のとても小さな音だったが、やはり音に敏感だった俺は眠れない。
すると今度は、ラジオに代わりピアノが聞こえてきた。
先程よりも音が大きく聞こえた。
姉の部屋にピアノがあるのも知っていたので、
“ 夜中にうるさいな・・・。”
とは思いつつ、やはり姉だと思った。
しばらくして、とうとう我慢出来なくなった俺は、隣の親父を起こして、
「 ピアノの音がうるさいよ。」
と言ったが、親父は耳をすましたあと、
「 気にしすぎだ、何も聞こえない。」
と、全く相手にしてくれなかった。
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