新イタリアの誘惑

ヨーロッパ・イタリアを中心とした芸術、風景。時々日本。

心ふるえる風景 パリ編㊷  サンジェルマンデプレ教会で出会った 慈しみに満ちた聖母の表情

2025-02-15 | 心ふるえる風景 パリ編

セーヌ川左岸にあるサンジェルマンデプレ教会は パリに現存する最古の教会だ

パリでは数少ない ロマネスク様式で建造されている

ゴシック建築のノートルダム大聖堂などと違って 観光客は少ない

境内に入ると ひんやりした空気に包まれる感覚だ

 

ステンドグラスから差し込む光を浴びながら ほぼ一周し終えようとした頃

一体の像に出会った 13世紀中ごろと推定される聖母子像

20世紀後半に 教会近くの壁の土台から発見されたとのことで

像全体のうち右半身は失われた形だった

 

顔も鼻の一部は欠けた状態だが

衣をかぶって 抱きかかえる我が子を見つめる表情は

慈しみに満ち 優しさの極地とでも言えそうな 微笑みを湛えて居る

 

人が 心から湧き上がる愛の気持ちを表現する時

これ以上はないだろうと思える 目元口元ほほの温かさ ・・・

以来私は この像の表情を 自らの心に大切に刻み続けている

 

 

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心ふるえる風景 パリ編㊶ 師走の夜 街角に浮かび上がったサンジェルマン・デプレのショーウインドウ

2025-02-11 | 心ふるえる風景 パリ編

12月の夜サンジェルマン・デプレ地区を歩いていて あるショーウインドウを見かけた

ここは靴店 冬場だけに落ち着いた色のシューズが陳列されている

 

ただ日本でいつもみかける陳列法とは 全く違った形が目を惹く

まず一足ずつ並べているのではなく 片方の靴だけが並ぶ

それも互い違いに上下に並べられているうえ 一つとして平行にはなっていない

 

まるで木の実のように あるいは大きな葉に止まった蝶のように

ゆらりゆらりと 空中に浮かんでいる

照明も斜めからの光線で 商品には微妙な陰影までつけられている

 

「どうぞ これらの靴を 自由気ままに履きこなしてください」

そんなメッセージが 込められているのかもしれない

 

眺めているうちに ふと気が付いた

今は12月 そうこれは「クリスマスツリー」

今年一年を締めくくるとともに キリスト誕生を祝う月に

「心尽くしの感謝を込めた プレゼントにどうぞ」と

パリっ子に 語り掛けているんじゃないのだろうか

 

ジングルベルに気持ちを湧き立たせている 中年男の妄想が

そんな夢物語を思い浮かべさせる 夜の巷のウインドウだった

 

 

 

 

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心ふるえる風景 パリ編㊵ パリで 日本のアニメ人気のすごさを改めて認識させられた一日

2025-02-07 | 心ふるえる風景 パリ編

 何年か前のパリ滞在中 ちょうど「ジャパンエキスポ」がパリで開催中だった

 日本の様々な文化を パリっ子に紹介しようという企画だが

 一番の目玉であり人気は 「日本のアニメ」だった

 

 会場に入る前のチケットを買う広場から もう大混雑

 日本発のアニメキャラの扮装をした若者たちで ごった返していた

 なかでも特に人気が集中していたのが「ワンピース」

 ある舞台上では すっかりキャラクターになり切った若者が

 さっそうと演技の最中だった

 

 その他にも 会場のあちこちで催されたイベントで

 フランス人によって再現されたアニメのシーンが たっぷりと展開されていた

 

 私はアニメについては ほとんど知識がなかったので 

 それぞれのキャラクターが どんなアニメを基にしているのか理解できなかったが

 どれほど外国で日本のアニメが人気で どれほど浸透しているのか

 しっかりと認識させてもらった一日だった

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心ふるえる風景 パリ編㊴ ロバート・キャパとゲルダ・タロー 二人の出会いの原点はモンパルナスのカフェだった

2025-02-04 | 心ふるえる風景 パリ編

 スペイン戦争や第二次世界大戦で数々の決定的写真を残した報道写真家 ロバート・キャパ

 彼が故郷ブダペストからパリに出た翌年の1934年 

 その人生を大きく変える出会いが パリの街角で起こった

 セーヌ左岸モンパルナス大通りにある 「カフェ・クーポール」

 

 当時は本名のアンドレ・フリードマンとして活動していたが 

 売れない無名のカメラマンに過ぎなかった

 素敵なモデルを探そうと通りを歩いていると 

 「クーポール」のテラスにいる 一人の女性が目に止まった 

 声をかけると本人は辞退したものの 彼女の友人を紹介してくれた

 その女性が ゲルダ・タローだった

 二人は急速に親しさを増した

 彼女は写真家であるだけでなく プロモーション能力にも長けており

 まずアンドレの名前を「ロバート・キャパ」と改名させ 写真のタイトルやキャプションも担当した

 そうした巧みな作戦によって キャパは次第に知られるようになった

 

 スペイン戦争にも同行して 撮影から現像まで共同での作業を担当した

 そんな中で発表された「崩れ落ちる戦士」が LIFE誌に掲載され

 キャパは一躍世界的な報道写真家として クローズアップされることになった

 

 こうしたキャパの飛躍の原点は モンパルナスのカフェでの偶然の出来事だった

 改めて彼等の人生を思い起こしながら 「クーポール」の前を眺めていると

 はつらつと語り合う若き二人の姿が 浮かび上がるかのように感じる瞬間があった

 

 

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心ふるえる風景 パリ編㊳ モンパルナスのカフェで モディリアニの若き妻ジャンヌの視線を感じた

2025-02-01 | 心ふるえる風景 パリ編

 モンパルナスの地下鉄ヴァヴァン駅前に カフェ「ラ・ロトンド」がある

 このカフェは1903年開業以来 多くの文化人や芸術家たちの集まる店となり

 毎夜 芸術論を論じる空間となった

 

 無名の画家だったモディリアニは ここにきては店のナプキンに客の似顔絵を描き

 それを売っては 食事と酒代を工面していた

 日本からやってきた藤田嗣治は カウンターにモデルを上げてダンスに興じることもあった

 他にもエコール・ド・パリの画家たちが 常に席を占めていた

 パスキン ローランサン シャガールなど・・・

 

 少し前の時代には 北部のモンマルトルが若き芸術家たちの拠点だったが

 家賃の高騰や地下鉄南北線開通によって 来やすくなったモンパルナスが新しい拠点となった

 

 セーヌ川左岸に宿を取った時 朝食は予約せず毎朝散歩がてらサンジェルマン地区を通って

 「ロトンド」でクロック・ムッシューの朝食を楽しんだ

 店内は現在もモディリアニの作品が 何点も飾られており

 ふと目を上げると モデルであり彼の妻であったジャンヌと目が合う

 そんな格別な雰囲気の中で モディリア二の画集を開く時間は

 極上の満足を 東洋の旅人にもたらしてくれるものだった

 

 

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