新イタリアの誘惑

ヨーロッパ・イタリアを中心とした芸術、風景。時々日本。

心ふるえる風景 イタリア編㊺ ミラノ大聖堂の正面に残る 聖書と戦争の意外な遭遇

2024-04-27 | 心ふるえる風景・イタリア4大都市編

 ミラノを離れる前 もう一度大聖堂に来た

 正面には5つの扉口があるが その中央扉にある見事な彫刻を

 もう1度見たくなったせいだ

 ここにはキリストの母 つまり聖母マリアの生涯が作品となって残されている

 

 最も印象的だったのが 「聖母被昇天」の彫刻

 中央に立つ聖母は 上空を仰ぎ

 天国で待つ息子の元へと向かう決断を キリリとした表情に示している

 その聖母を囲むのは 天使たち

 集団でマリアを支え 天空への旅立ちの準備を整えている

 これは聖母の生涯の 最終盤に当たるシーンだ

 一方スタートとなるのは「受胎告知」

 大天使ガブリエルが 聖母の前に現れ

 聖なる子(キリスト)を 身ごもったことを告げる場面だ

 立ち尽くすマリアは 思いもかけない宣告に戸惑う

 波乱万丈の生涯が 正面の大扉に描かれているのは

 この大聖堂が聖母マリアに捧げられていることを 象徴している

 

 ところでこの彫刻群の中に1か所 現実世界の歴史を示すものがあった

 「受胎告知」の大天使の左袖の一部が 失われ変色している

 これは第二次世界大戦時 連合軍の爆撃が行われた時の傷跡だ

 連合軍の爆撃は 大聖堂を避けて行ったが

 たまたま流れ弾が当たってしまい 破損してしまったのだという

 

 聖書の世界に紛れ込んだ 負の遺産とでも言えばいいのだろうか

 

 

 

 

 

コメント (5)
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