新イタリアの誘惑

ヨーロッパ・イタリアを中心とした芸術、風景。時々日本。

ダリ美術館上 え、リンカーンが女性の裸像に!ダリが故郷に創った奇想天外の美術館

2020-04-11 | スペイン北部

 バルセロナから、フィゲラスというフランス国境近くの町を訪れた。ここにはサルバトール・ダリが自ら創り上げたダリ劇場美術館がある。

 フィゲラスはダリが生まれ育った町。そして美術館の場所は、彼が14歳の時初めて作品を出品した展覧会の会場である市立劇場のあった所だ。1930年代のスペイン内戦で廃墟化していた劇場跡を、自らの美術館に復元したというエピソードが隠されているゆかりの場所だ。

 駅から歩いてくると、巨大な卵がいくつも載せられた建物が見えてくる。

 壁一面に付いているブツブツは、近づいてみるとパンのようだ。

 正面入口は普通の建物のように見える。

 だが、中に入ると奇想天外のもろもろが次々に現れた。まず、入口中庭には本物のキャデラック。車内でボタンを押すと水が噴き出す「雨降りタクシー」。

 屋根から立ち上がるブロンズ像は「女王エステル」。

 真上には球体のような明かり取りの天井が開ける。

 正面には顔のない巨大な女性像がドンと描かれている。

 下に座る人と比較すれば、いかに大きいかが歴然だ。

 横の壁上部に肖像画が掛かっている。この距離からみれば、リンカーン像であることがわかる。

 しかし、近付いて行くと、そこには裸の後ろ姿をした女性像が現れる。この女性は最愛の妻ガラだ。タイトルは「20m離れて見るとリンカーンの肖像に変わる、地中海を眺めるガラ」。

 次のスペースへ。赤い柔らかなソファのある部屋。だが、部屋の正面に回り、階段を上ってそこにあるレンズを通してみると、暖炉は鼻、ソファは唇、カーテンはブロンドの髪に変化して、一人の女性の顔になる。

 ハリウッド女優メイ・ウエストの顔だそうだ。

 メイ・ウエストは19世紀ハリウッドで活躍した女優。代表作に「美しき野獣」などがある。ダリは彼女を一種の理想女性としていたといわれる。まあ、本物の顔と似ているかどうか、と聞かれれば「う、」と口ごもってしまうのだけれど・・・・。

 

 

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ヴェネツィアに見る疫病との闘いの歴史…新型コロナウイルス克服を願って。

2020-04-07 | 感染症 ヴェネツィア

 今、新型コロナウイルスによる感染爆発のニュースが世界を席巻している。ついに日本でも7日、緊急事態宣言の発令となった。天然痘、チフス、マラリア、スペイン風邪、ペスト・・・。思えば人類の歴史はある意味疾病との闘いでもあった。

 そんな闘いの跡は、イタリア・ヴェネツィアにもはっきりと残っている。もう10数年前、初めてヴェネツィアを訪れた時、最も優雅で雄大な教会=サンタマリア・デッラ・サルーテ教会の美しさにみとれた。

 そして教会の歴史をガイドブックなどで読んでみると、私にとってはとても意外な建立の理由が記されていて驚いた。

 教会の建設が決まったのは1630年の事だ。実はこの年、ヴェネツィアを黒死病とも呼ばれた感染症、ペストが襲っていた。その猛威は死者数万人、都市の人口の3分の1が命を落とした。

 元老たちは願いを込めて聖母マリアに祈りを捧げた。「この病から街を救ってくれた暁には、聖母に捧げる大教会を建立します」。そして数年後、疫病が治まった時に建設が始まり、約50年後の歳月を費やしてこのバロックの大教会が完成した。疫病撲滅に対する人々の願望が形となって存在するのが、この教会なのだ。

 願いは教会の各所に表されている。特徴的な丸屋根の周囲にある渦巻き模様の装飾は、聖母の冠を象徴したものだ。

 毎年行われるサルーテの祭りには、改めて聖母への感謝の祈りがささげられる。

 普段は運河で隔てられたサンマルコ地区と教会との間に、祭りの日限定の橋が架けられる。

 僧侶たちは堂内に集合して一斉に祈りを捧げる。

 その対象は、主祭壇にある群像だ。正面に3つの像が並んでいる。

 中央に立つのは、聖母像。

 右には、逃げ出そうとする老婆の姿。これはペストを象徴したものだ。

 そして左にはひざまづいて聖母に感謝する女性。こちらはヴェネツィアそのものを象徴している。

 つまり。この教会は疾病の悲惨な歴史を刻みつけた主祭壇によって存在しているのだ。

 ヴェネツィアでは、ジュデッカ島にあるレデントーレ教会もまた、ペスト終焉を記念して建てられたものだ。

 レデントーレの祭りでは、感謝の花火が打ち上げられている。

 話は変わるが、今も盛んに話題になる「検疫」は英語で quarantine というが、この語源はヴェネツィアで始まった検疫制度に由来する。

 14世紀、世界中でペストが流行した際、当時のヴェネツィア政府は通商等で外国から訪れる人々に感染症がないことを確認するため、当ペストの潜伏期間と考えられていた40日間船を港の外に停泊させる法律を実施した歴史がある。イタリア語で40日間を意味する quarantina がそのまま「検疫」として今も使われている。

 また、ボッカチオの名作「デカメロン」も、1348年のペスト流行を逃れるためにフィレンツェ郊外に逃れてきた男女がそれぞれに物語を語るという内容。疫病がきっかけで生まれた小説だ。トーマス・マンの「ベニスに死す」も疫病チフスに襲われたヴェネツィアが題材になっている。

 さらに、ニュートンの万有引力の法則と疫病との関係。1664年ケンブリッジ大学奨学生試験に合格したニュートンだが、その年のペストの流行によってやむなく実家で避難生活を送ることになった。 実家にあったのが、リンゴの木。これの観察の中で万有引力の法則が導き出されたという。疫病とのかかわりはさまざまな場面で見ることが出来る。

 

 疫病との闘いは終わることのないものかもしれないが、その中でも人は英知を振り絞って一つ一つ克服してきた。今回の新型コロナウイルスに対しても必ず、遠からず勝利する日が来ることを信じて、日々を過ごしていきたい。

 

 

 

 

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京都の桜⑦ 桜越しに三味の音が・・・祇園白川 巽橋付近

2020-04-03 | 京都

 最後に訪れたのは祇園白川。巽橋付近の夜は静か。白川の流れを包むかのように、夜桜が枝を垂らす。

 茶屋建築の店が並ぶ川沿い。桜越しに三味の音が聞こえてきそうだ。

 「かにかくも 祇園は恋し寝る時も 柳の下に水の流るる」

                  吉井勇の歌碑が川端に立っている。

 この付近は、もう見ごろを終えようとしている桜も。

 一方、今が旬と咲き誇る桜は、夜でも見事に美しい。

 ああ、料亭の模様が、桜越しに垣間見える。

 白川の静けさ。

 白と赤。色彩の競演もあった。

 ただ、ちょっと大きな通りに出ると、まだたくさんの人の群れに出会った。

 帰り道、店先を飾っていた和傘が優美。

 その先の路地では、舞妓さんの後ろ姿をちらりと認めることが出来た。

 

 

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