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ぽかぽか春庭「我的中国的工作」

2024-02-27 00:00:01 | エッセイ、コラム
20240225
ぽかぽか春庭ことばの知恵の輪>春庭漢字話(6)我的中国的工作

 春庭アーカイブです。何度目かの再録です。
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2009/04/04
ニーハオ春庭ニッポニアニッポン語教室>漢字の国からニーハオマ?(4)我的中国的工作

 中国の「中」という文字を見たとき「チュー」という音声が頭に浮かびますが、「中」ひとつだけあったら、日本語母語話者は「チュー」のほか、「なか」という発音も頭のなかに思い浮かぶるはずです。そして、文脈によって「チュー」と読んだり「なか」と読んだりします。私たちはこのことを当たり前のことのように感じていますが、これは世界的には特殊なことがらなのです。

 「人中で」というときは「ひとなか」で「なか」と読み、「会議中」「食事中」というときは「チュー」、「一日中」のときは「ジュー」と、ひとつの文字の発音を何種類もつかいわける技術を身につけていることは、世界の言語文字表記でほかにあまり例のないことです。漢字ひらがなカタカナ3種類の文字を混ぜて使い、しかも漢字にはひとつの文字に数種類の発音があり、和語か漢語か、という語彙の種類別によって、文字の読み方を変える。

 「きのう、コーエンに行ったんだよ」という話を聞いたとき、前後の話の続きから、「公園に行った」のか、「講演に行った」のか、「公演に行った」のか、文字を思い浮かべて判断しています。私が以前続けていた視覚障害者のための朗読ボランティアでは、よく同音異義語の説明を求められました。前後の文脈から判断できないとき、「コーエンにイッタ」と朗読した場合、意味がわからないからです。

 私の仕事の大切な部分として「日本語学習者への漢字教育」があります。主として非漢字圏の学習者に、漢字に興味を持たせて漢字の成り立ちなどを解説しながら日本語語彙を導入する、という授業を行っています。「漢字のなりたち解説授業」の実際については、また別のシリーズ「春庭の漢字授業」で実況中継記録をお伝えします。

 さて、私は現在、いつもの年なら春休みを楽しんでいる時期なのに、中国で仕事を続けています。「日本の大学院で博士号をとるために留学する大学院修士号取得者」たちに、日本語を教える仕事。これから中国での日常生活の報告のほか、授業報告もしていくつもり。まず、日本と中国の漢語の話題から。

 今回の中国滞在では、中国人学生、しかも大学院修士号取得者対象ですから、漢字教育といっても、日本語語彙の漢字読み方の中で、留意すべき読み方や意味を解説するにとどめることになります。 
 中国語で教育を受けてきた層には「漢字なら中国が本場だから意味も書き方もよくわかる」という思いこみがあります。漢字教育をなおざりにする学生もいるので、中国語と日本語の字体の違い(簡体字との違い)と読み方使い方の違い、また、同じ漢字でも意味の異なるものに留意させます。

 三月末、中国人学生に日本語の漢字テストを実施しました。皆よくできます。文法項目としては日本語初級の学習をしているのですが、漢字語彙は日本語能力試験2級レベルの語彙をどしどし教えていく教科書を使っています。『実力日本語』という「日本の大学院に留学する中国人留学生」を対象にして開発された教科書です

 <つづく>
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