昨日ここにアップしたローゼンタールのプレートはアメリカのオビントン兄弟社からの注文によるものだったが、ハンガリーの名窯ヘレンドのこのパターンは、1851年のロンドン万国博覧会に出品され、当時の英国ヴィクトリア女王の目に留まって一括して買い上げられたというもの。今でも手描きのために1点1点パターンが微妙に異なっている。ヘレンドの代表的なパターンといえば緑色を基調とするアポニーグリーンでその食器をそろえたが、かなり趣向の異なるパターンとして買ったのが、多彩色で蝶が生き生きと描かれているヴィクトリアシリーズ。比べてみると実に華やかで東洋的ですらある。
そういえば、昨日午後、NHK BSの「スイーツ列車紀行「オリエント急行ライン お菓子秘話 オーストリア~セルビア」」(去年2月に初めて放送されたもので今回は多分再々放送くらい)で通過点のように比較的あっさり触れられていたのがハンガリー。そのハンガリーで登場したのが「クルトゥシュカラーチ」という地元の菓子だった。ひも状のパン生地を棒に巻き付けて作る焼き菓子でバウムクーヘンにも似ている。
高島礼子が案内するこの番組は、コロナ禍が世界を席巻する前に収録されたもので今見ると何とも平和な雰囲気にあふれている。しかし、いまだ内戦の傷跡をそこかしこに残すセルビア、ベオグラードの町の廃墟を見ると、東欧革命からまだ20年ほどしかたっていないことを改めて思い起こさせる。ヘレンドにしてもかつての苛烈な共産主義の下でよくその伝統が保たれたものだと思う。それは政治体制がいかにあろうと文化は生き残るものだということの証拠なのかもしれない。
このプレートにケーキでも載せて、と思うが今にも舞い飛びそうな蝶が目に入って落ち着かないか。