2021.1.27(木)曇り
LIFE SPAN 老いなき世界 デビッド・シンクレア著 東洋経済新報社刊 綾部図書館借本
京都新聞の書評で見つけ、図書館で借りたもの。「がん・認知症・老化」現在のわたしの研究課題なんだが、がんについてはおおよその知識を得て、がんに対する心構えが出来たところである。続いて老化について本を読みあさったが、老化とは実に漠然とした概念で要領を得ない。医学的、科学的に老化を知りたいのだが、専門的な本では難しくて理解できず、一般的な本では本では本当に知りたいことが解らない。
京大の湊先生の講演で聞いた老化細胞の話が印象に残り、これが老化の原因かと思ったが、講演内容をよくよく読むと、免疫系における老化というもので、老化の一部と考えるべきかと思う。ただ、先生の「老化細胞だけを選択的にとり除いてやること。少なくとも動物モデルでは、これにより、がん死亡率が低下し寿命が延びるだけでなく、加齢による心臓、腎臓、肝臓など主要臓器の機能劣化が改善し、云々」という言葉が気になった。老化細胞(死なないが分裂は止めてしまう細胞)の蓄積が老化なのだと考えてしまった。本書では未来の選択肢のトップに老化細胞の除去をあげている。老化細胞がどのようにしてできるのか、どのようにして取り除くのかはここでは記さないが、そのことが老化を止め、若返りを実現することは確かなようだ。本書を読んでいる間に大きな出来事が起こった。老化細胞の除去は遠い異国の出来事で遠い将来のことかと思っていたが、日本でも老化細胞の除去がマウスで成功したと言う記事が1月24日に新聞掲載された。
東大医科学研究所の論文
ネットにも掲載され、GLS1阻害剤を老齢マウスに投与すると加齢現象、老年病、生活習慣病が改善したことが証明されている。この東大医科学研究所の記事には5~10年後の臨床試験を目標に研究を進める旨記されており、わたしたちが生きている間に健康寿命を延ばす治療法として登場するかもしれない。海外ではもう老化細胞除去薬ができあがっている。(セノリティクス)老化細胞除去法はおそらく最も早く、最も確実になされるだろうアンチエイジングと思われるが、老化細胞の発現、蓄積は老化の現象であって原因ではないと説く。
わたしの読んだいくつかの老化に対する本、それはやや専門的なものもあり、いわゆる健康本的なものもあるが、そこに書かれている、活性酸素、乾燥、細胞老化などなど様々な要素は老化による現象であって老化の真の原因ではないようだ。ようだというのは実は老化の原因について書かれてある相当の部分は遺伝子工学でもやっていないと、一読で理解できるものではないのだ。まして図書館で借りて締め切りのある本を理解するのは困難である。それでは購入しようかとも思うのだが、購入しても当分読むことはなさそうである。
若さ→DNAの損傷→ゲノムの不安定化→DNAの巻きつきと遺伝子調節(エビゲノム)の混乱→細胞のアイデンティティの喪失→細胞の老化→病気→死
生から死へのモデルだが、この一つにあるいはすべてに人の手で働きかけができたら、、老化は止まり、若さが取り戻せるというものらしい。
おそらく本書に書かれていることはとんでもないインチキではなくて真実あるいは真実に近いものであると思う。そしてシンクレアとそのチームは若返り法と若返りの薬を作り出して世に出すだろう。彼らの信念は、生命は老いるようにはできていなくて、老化は治療できる病気であるとしている。現在存在するあまたの病気の根源は老化にあり、モグラたたきのように出てくる病気を治療するよりも根本の老化を治療すれば莫大な医療費が節約されるとしている。若返りの治療薬があれば、治療困難ながんや認知症をはじめ多くの難病も治ることとなる。医療の面だけで言えば素晴らしい薬だがそれが人体にとってまるで安全だったしても多くの問題を引き起こすこととなる。なにせ寿命が延びて人口が増えるのだから、環境問題、食糧問題、労働市場の問題、社会保障の問題、格差の拡大などなど。
本書の後半部はそれらの問題について検討考察しているのだが、実にポジティブにとらえ明るい未来を想像している。つづく