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「性善説」が人を動かす 危機が生んだ相互信頼の経営

2012年07月02日 08時08分50秒 | お役立ち情報
【わが社のオキテ】

 婦人下着大手のワコールホールディングスには、社員の出退勤を管理するタイムカードがない。かつて労使関係の悪化からストライキ寸前になるなど、経営陣と社員の関係が破綻の危機に直面。この苦い経験から、創業者の塚本幸一社長(当時)がたどりついたのが、社員を徹底して信頼するという「相互信頼の経営」だった。世代が変わった今日でも、同社を支える精神的柱として脈々と息づいている。

 戦後の高度成長期のまっただ中、多くの会社で労働組合が誕生し、従業員と経営者の理想的な関係が模索された。しかし、会社が急速に発展する一方で労働問題が深刻化し、多くの企業で激しい労使対立やストライキに直面するなど、労使関係は悪化した。

 ワコールも例外でなかった。昭和21年に創業、日本社会への洋装文化の浸透とともに女性下着が急速に普及し、会社は右肩上がりに成長した。すべてが順風満帆のようだったが、水面下では労使対立がうごめいていた。

 「甘い言葉で働かせ、その利益を横取りする。経営者は敵だ!」。

 ワコールの労働組合の言い分はこうだった。しかし、塚本社長は「なぜ同じ企業で働く人間が対立しなければならないのか」という思いでいっぱいだったようだ。

 そして昭和37年の春、緊張が高まっていた労使関係はついに重大局面を迎えた。「48時間後にストライキをする」。組合が通告を出したのである。

 ことの重大性に危機を感じた塚本社長は、本来なら幹部が出席する組合との話し合いの場に自ら出席。4~5時間をかけて経営の現状や将来の展望、さらに従業員の生活向上や労働環境改善について、言葉を尽くして語った。

 その結果、労組側が折れ、ストライキはなんとか回避できたが、塚本社長の心の中には依然としてわだかまりが残った。

 そんな折に耳にしたのが出光興産の出光佐三社長(当時)の「人をとことん尊重する経営」だった。

 聖徳太子の言葉「和を以て貴しとなす」に現されるように、日本は米国のような“契約社会”ではなく、互いに尊重する精神文化を育ててきた。この精神を取り入れた出光興産には、就業規則も出勤簿もなかったのである。

 出光社長の話に打たれた塚本社長に、明快な答えが浮かんだ。それが従業員と経営者が互いに、完全に信頼しあう「相互信頼の経営」だった。

 「私は徹底的に皆さんを信頼することにしました」。塚本社長は社員に向かって宣言した。

 そして、塚本社長が労働組合に出した約束が『遅刻早退私用外出のすべてを社員の自由精神に委ね、これを給料とも、人事考課とも結びつけない』

 それからである。職場の雰囲気が一変し、皆一生懸命に働くようになったという。

 以来、今日に至るまでタイムカードがない。約50年前にできた「相互信頼の経営」は、いまも脈々と流れている。

 新入社員の中には、タイムカードがないことに驚く社員もいるが、それだけに、かえって自ら時間管理しなければという気持ちになるそうだ。やはり、自主的な“やる気”を引き出すのは、「性悪説」より「性善説」のほうが効果が大きいようだ。

 「タイムカードがないのは、経営者と従業員、上司と部下、同僚同士が互いに信用しようとする思いを持っていることの証。こうした信頼が、従業員の仕事へのモチベーションの維持にもつながっている」(広報部)と話している。(中山玲子)

◇会社データ◇

本社=京都市南区吉祥院中島町29

設立=昭和24年11月

事業内容=婦人下着の製造・販売など

売上高=1718億円(平成24年3月期連結)

従業員数=1万7843人(同3月末)
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