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激安料金で殴り込み 電話ものむ対話アプリ経済圏

2014年02月27日 06時40分28秒 | 経済
 膨張し続ける「対話アプリ経済圏」が、今度は携帯電話の通話サービスものみ込もうとしている。無料対話アプリのLINE(東京・渋谷)は26日、1分あたりの通話料金を最大で8~9割も割り引くサービスに乗り出すと表明。普段使っている電話番号はそのままで、LINEのアプリ内から固定電話や携帯電話などに発信できるというものだ。日本を含む世界6カ国で3月に開始する。

 LINEの利用者は年内にも5億人に達するとみられ、多くがスタンプを使ったメッセージ交換や無料通話に夢中になっている。今回携帯電話や固定電話へ発信するサービスに参入したことは、世界中に巨大な顧客基盤を抱える仮想的な携帯電話会社が一夜にして誕生したとも言い換えられる。


■通話料金が8~9割引きに


LINE電話の発表会に登壇した舛田淳執行役員(26日、東京・渋谷)
 「新しい電話サービスがLINEの強みをさらに伸ばす」――。新サービスの記者発表会で舛田淳執行役員はこう宣言した。一般的にスマートフォン(スマホ)からスマホへかける料金は1分あたり42円。LINE電話では最安値の場合、1分あたり6.5円と85%引きになる。複数のプランを用意しており、固定電話あての専用プランなら1分2円と95%も安くなる。

 無料でメッセージを交換できることを武器に、携帯電話会社のメールやショートメールサービスの価値を半減させたLINE。料金破壊で通話サービスまで奪うことになれば、既存の携帯電話会社の存在意義すら揺るがしかねない。米ワッツアップを買収した米フェイスブックや、キプロスのバイバー・メディアを傘下に収めた楽天もLINE同様、対話アプリの人気にあやかろうと水面下で次の戦略を練る。

 楽天はバイバー買収に先立ち昨年末、「楽天でんわ」と呼ぶ独自の電話サービスを立ち上げている。グループ会社のフュージョン・コミュニケーションズ(東京・千代田)の通信基盤を活用。専用のアプリを用意し、これを使って電話をかけると1分21円と通常の約半額で済むうたい文句で急速に利用者数を増やす。


複数のプランを用意した「LINE電話」。初期設定など不要で、いつも使っているアプリの中から使えるのが特徴だ
 100円分通話するたびに独自の「楽天スーパーポイント」で1ポイントを付与するなど、主力の電子商取引(EC)との連携を打ち出したことが奏功。開始2週間余りで約25万人がダウンロードした。

 LINE電話と楽天でんわに共通する特徴が、原則080や090で始まる携帯電話会社が割り当てた自分の電話番号をそのまま使って電話をかけられる点だ。これまでにも割安に通話できる通話サービスとして、NTTコミュニケーションズ「050plus(プラス)」などインターネット回線経由で会話するIP電話があった。ただ050で始まる別の番号を使う必要があり、電話した相手のスマホ画面には見慣れぬ番号が表示されていた。円滑なコミュニケーションの妨げとなっていた。

 LINE電話と楽天でんわなら複数の番号を運用する手間がかからない。安いのは魅力でも面倒はいやだ――。そう考える大多数の消費者は多く、格安通話を先導してきたIP電話会社はこれから厳しい戦いを強いられることになりそうだ。


■電話以外ものみ込み、そして壊す


安さが最大のメリット。利用者が増えれば、スマホOS(基本ソフト)の電話発信画面を開く回数が減る可能性がある。結果として携帯電話会社の収益減少と存在意義の低下をもたらしかねない
 対話アプリ経済圏の強みは、利用者が既にアプリをスマホに入れており、人によっては秒単位でメッセージ交換のために使っていることだ。スマホの画面を占有している時間が長い対話アプリの中で、手軽に安くおまけにいつも通りの感覚で電話をかけられるメリットは大きい。

 20日に4億5000万人を抱える対話アプリ会社のワッツアップが、190億ドル(約1兆9000億円)でフェイスブックに買収されるニュースが世界を駆け巡った。企業価値の算定を踏まえると高すぎるとの意見も一部で上がった。ただ巨大な顧客基盤を生かして、通話サービスなど既存企業が持つ収益を取り込む余地が広がっているとすれば順当な評価額だったともいえる。スマホOS(基本ソフト)の電話発信画面を開く利用者の減少は、すなわち携帯電話会社の収益の減少を意味し、対話アプリがそれを奪うことになるからだ。

 米アップルがスマホ「iPhone」を2007年に発表した際、スティーブ・ジョブズ氏は「電話機を再発明する」と宣言した。その結果生まれた新たなスマホ経済圏は、デジタルカメラなど既存の様々なハードウエア産業を取り込み壊しつつある。現在対話アプリが行おうとしてるのは、電話サービスを含む既存のサービス・ソフトのあり方を一新させる再発明だろう。対話アプリの経済圏がのみ込み壊す産業は電話だけで済まないことは間違いない。

(電子報道部 高田学也)
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仮想通貨、もろさ露呈 ビットコイン取引停止

2014年02月27日 06時34分29秒 | ニュース
 インターネット上の仮想通貨ビットコインが揺れている。運営会社が東京都内にある大手取引所「マウントゴックス」が26日未明に取引全面停止を表明。円換算で300億円超の資産が宙に浮いた。登場から5年。政府や中央銀行の影響を受けない無国籍通貨として注目を集めるが、もろさも露呈している。


 Q ビットコインとは何か。

 A ネット空間を行き交う仮想通貨だ。円などの通貨は政府や中央銀行が規制し供給量も管理する。ビットコインはプログラムで発行量の上限が決まっているだけ。銀行を介さずに世界中のどこにでも送金でき、手数料もほとんどかからない。発行総額の時価は一時1兆円規模に膨らんだ。



画像の拡大 Suicaなどの電子マネーは、事前に入金することで初めて価値を持つ。これに対し、ビットコインはお金の裏付けがない。高度な暗号技術で複製を防いでおり、希少性が資産としての価値を生んでいる。その意味では通貨というより、希少な金属としての価値が評価される「金」に近い。

 Q 今回の取引停止は何が起きた?

 A マウントゴックスはビットコインと米ドルや日本円などを交換する取引所の老舗。口座数は100万超で米欧の利用者が多い。日本の専門家は「取引システムがハッキングの被害を受け、顧客のビットコインが盗まれていた」と見る。

 取引停止後の26日、運営会社がある東京・渋谷では、英国から急きょ訪日したコリン・バーゲスさん(40)が「私のビットコインはどこにあるのか」とぼやいていた。同社に311ビットコイン(1800万円相当)を預けていたが、7日に引き出し停止になったという。

 運営会社のマルク・カルプレス社長は26日夜、取引所サイトに「私はまだ日本にとどまっている」とし「問題に対処すべく努力している」との文章を寄せた。だが、事態がどう収拾するかは流動的だ。

 Q 日本政府はどう対応している?

 A 菅義偉官房長官は26日の会見で「必要があれば対応する」と語った。警視庁には利用者から「事件になるのか」との相談が来ている。システムへの不正アクセスなどの疑いがあれば、捜査に乗り出すことになる。だが、マウントゴックス側から説明がなく事態を把握できていない。

 ビットコインは様々な法律のすきまにある。金融商品取引法の規制対象となる有価証券や通貨とみなす考えもありうるが、同法は規制対象を明示しており、「解釈で対象を広げる余地はない」(清原健弁護士)。

 世界全体のお金の量に比べれば、現時点でビットコインの経済活動への影響は非常に限られている。国や中央銀行の影響を受けない自由な仮想通貨として誕生しただけに、自己責任に委ねるべきだとの考えもある。

 Q 海外の受け止め方は?

 A 米国では取引所に免許制を導入する案などが浮上しているが、議論はまだ生煮えだ。一方、世界の関連企業が加盟するビットコイン財団は25日、「これは決してビットコインの終わりではない」との声明を発表した。同財団は「我々の産業の成熟につれ、能力があり責任感のある起業家や投資家が出てきている」としている。
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