07/2/3 医療安全と看護教育
看護安全教育におけるメタ認知力育成のための
考えどころ
東京成徳大学福祉心理学科 海保博之
概要****************************
安全の問題を個人的な世界に閉じ込めてしまうのは、危険であることをしっかりと認識した上で、そうは言っても、個人のエラーがただちに事故に直結しがちな看護現場、また、事故が起これば、たまたま現場にいた個人が業務上過失としてその責任を問われることが多い看護現場の中では、エラー、事故を防ぐ自己努力も必要である。
メタ認知力は、そうした自己努力をより効果的なものにすることを考えるための認知心理学のキーワードの一つである。
そこで、本報告では、メタ認知力を高めるための看護師養成カリキュラム作成の考えどころを、認知心理学の立場からいくつか提案してみる。
王道は、エラー、事故にかかわる包括的な知識を時間をかけて教育することである。
その上で考えるべきことは、大人なら誰もがそれなりにおこなっている内省/反省( reflection)を通したメタ認知力の育成の方策である。
具体的には、「仕事をしている今現在の心と行動を内省する力」、さらに、「次にくるべきことを予測できる力」、そして「事後的にあとを振り返る力」の3つを育成するカリキュラム設計について考えてみる。
******************************
前提1 メタ認知とは
メタ認知は、次の2つからなる。
・自分自身の心と行動とを知る自己モニタリング機能
・自分自身の心と行動とを状況にふさわしいように自己コントロー ルする機能
前提2 メタ認知力を育成するには
2つの方策がある。
一つは--これが王道であるが--、エラー、事故にかかわる知識を豊かにするすることである。とりわけ、エラー、事故の心理学的な知識は、必須である。どんなエラー、事故がどんな時に発生するかの知識のある人とない人とでは、明らかに、メタ認知力が異なってくる。
もう一つは、内省/反省( reflection)を通して、より直接的にメタ認知力を高めることをねらうものである。内省/反省の力を高めることで、知的活動や行動が、状況にふさわしいように自己制御できるようにすることで、エラー、事故を減らす効果を期待するものである。
前提3 メタ認知は、領域固有
ただし、メタ認知力の育成は、安全教育のための専売特許ではない。広く一般の学習においても、自ら学ぶ力を支えているものである。
しかし、訓練の効果は、領域固有と考えたほうがよい。他の学習への転移もある程度は期待してよいかも知れないが、わずかと考えておく。
前提4 誰が授業を担当するか
心理学の素養があり、看護現場にもある程度は精通している人が最適であるが、それほど人材はいない。心理学者と看護教師とのチーム・ティーチングでもよい。いずれにしても、演習、実習の教材や場面作りには、両者の連係は必須であろう。
看護安全教育におけるメタ認知力育成のための
考えどころ
東京成徳大学福祉心理学科 海保博之
概要****************************
安全の問題を個人的な世界に閉じ込めてしまうのは、危険であることをしっかりと認識した上で、そうは言っても、個人のエラーがただちに事故に直結しがちな看護現場、また、事故が起これば、たまたま現場にいた個人が業務上過失としてその責任を問われることが多い看護現場の中では、エラー、事故を防ぐ自己努力も必要である。
メタ認知力は、そうした自己努力をより効果的なものにすることを考えるための認知心理学のキーワードの一つである。
そこで、本報告では、メタ認知力を高めるための看護師養成カリキュラム作成の考えどころを、認知心理学の立場からいくつか提案してみる。
王道は、エラー、事故にかかわる包括的な知識を時間をかけて教育することである。
その上で考えるべきことは、大人なら誰もがそれなりにおこなっている内省/反省( reflection)を通したメタ認知力の育成の方策である。
具体的には、「仕事をしている今現在の心と行動を内省する力」、さらに、「次にくるべきことを予測できる力」、そして「事後的にあとを振り返る力」の3つを育成するカリキュラム設計について考えてみる。
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前提1 メタ認知とは
メタ認知は、次の2つからなる。
・自分自身の心と行動とを知る自己モニタリング機能
・自分自身の心と行動とを状況にふさわしいように自己コントロー ルする機能
前提2 メタ認知力を育成するには
2つの方策がある。
一つは--これが王道であるが--、エラー、事故にかかわる知識を豊かにするすることである。とりわけ、エラー、事故の心理学的な知識は、必須である。どんなエラー、事故がどんな時に発生するかの知識のある人とない人とでは、明らかに、メタ認知力が異なってくる。
もう一つは、内省/反省( reflection)を通して、より直接的にメタ認知力を高めることをねらうものである。内省/反省の力を高めることで、知的活動や行動が、状況にふさわしいように自己制御できるようにすることで、エラー、事故を減らす効果を期待するものである。
前提3 メタ認知は、領域固有
ただし、メタ認知力の育成は、安全教育のための専売特許ではない。広く一般の学習においても、自ら学ぶ力を支えているものである。
しかし、訓練の効果は、領域固有と考えたほうがよい。他の学習への転移もある程度は期待してよいかも知れないが、わずかと考えておく。
前提4 誰が授業を担当するか
心理学の素養があり、看護現場にもある程度は精通している人が最適であるが、それほど人材はいない。心理学者と看護教師とのチーム・ティーチングでもよい。いずれにしても、演習、実習の教材や場面作りには、両者の連係は必須であろう。