05/3/28海保博之「ミスに強くなる」中災防新書
終わりに
●竹やり精神主義から脱却する
本書を読み終えて、
「よく見れば、ーー」(1章)
「しっかり覚えれば、ーー(2章)」
「慎重に考えれば、ーー」(3章)
「気持ちを穏やかにしてやれば、ーー」(4章)
「あわてないでやれば、ーー」(5章)
「きちんと話しを聞いていれば、ーー」(6章)
という話だったのか、結局は、
「自分がしっかりすれば、ーー」(序章)
という「竹やり精神主義」の話だったのか、との感想をもたれたとすれば、それは、あながち間違いではありません。
「しかし」とここで反論しないと、本書を上梓した価値はないことになります。
心理学は、いかなる意味でも「竹やり」精神主義とは関係ありません。サイエンスだからです。ヒューマンエラー、ヒューマンファクターズの心理学的な研究が地道に行われています。そして、事実も理論も豊富になってきています。
ただ、サイエンスには表現に厳しいしきたり(方法論)があります。そのしきたりに従って、集積してきた事実と理論を論文として限られた専門家だけに向けて発信しています。
本書では、それらのエッセンスを自分なりに消化して(換骨奪胎して)一つの物語として、心理学の素養のない方々にもわかってもらえるような「ミスの心理学」の話をしてみたつもりです。物語なら、心理学のしきたりに慣れない方々にもわかってもらえると思ったからですし、提案もインパクトがあると思ったからです。
やや筋書きに無理があったり、内容にこなれないところや言い過な無知がミスを誘発している現状を少しでも改善できればとの思いを優先させたためとお考えください。
●本書ができるまで
本書の元になっているのは、雑誌「働く人の安全と健康」での連載「心の管理不全とヒューマンエラー」(2002年)と、「安全衛生のひろば」での2年間にわたる連載「ヒヤリハットの心理学」(2003ー2004)です。
いずれも、中央労働災害防止協会が発行している月刊雑誌です。
連載中は、前者では槙田***氏、後者では笹本**氏と槙田***氏に多大のお世話になりました。
とりわけ、「ヒヤリハットの心理学」をこのような斬新な形でやってほしい、との提案していただいた手塚**氏には感謝の言葉がありません。さらにそこでのイラスト(***氏制作)の出来映えには驚いています。イラストは制作者の了解をえて****、本書にそのまま使用させていただきました。
そして、本書をこのような形で世の中に出すにあたっては、同協会教育普及部の安藤真知子氏にご尽力いただきました。
末筆ながら、これらの方々には衷心より感謝します。
2005年3月末日
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