1111122222333334444455555666 04/6/14海保 7月9日 締切り 雑誌「公共建築」 2500字 (33文字/1行 76行)+ 写真や図3枚 「建築物におけるヒューマンエラーを防ぐ」
●3つのタイプのヒューマンエラー
ヒューマンエラーの分類の仕方には、いろいろあるが、ここでは、我々が何かをするときに従っている「計画(plan)-実行(do)-確認(see)サイクル」の各段階で発生する3つのエラーを想定した話をしてみる。 1 2 ***図1 パワーポイント 4 5 「思い込みエラー(ミステイク)」とは、限定された手がかりだけに基づいて誤った状況認識をしてしまうことである。さまざまな勘違いや迷子がその例である。 「うっかりミス」は、目標としたこと/決められていることとは違ったことをしてしまう/しなかったエラーである。段差でのつまずきや鍵の締め忘れなどである。 「確認ミス」とは、当初の目標にあった行為がきちんとできているかどうかの確認をしなかったり、誤った確認をしてしまうことである。校正ミスなどである。
●たとえば、「直角」で想定されるエラー
建築物には「直角」が実に多い。段差がその一つ。もう一つの直角は、廊下である。いずれもエラー、事故を誘発する。 直角の廊下での出合頭のぶつかり事故を例にとれば、前述の3つのヒューマンエラーは次のようになる。 「思い込みエラーの例」 ・夜なので誰も来ないはずとの思い込みで歩く速度をゆるめな かったためぶつかってしまった。 ・前を行く人が曲がったので大丈夫と思い込んで曲がったら、 あやうくぶつかるところだった。 「うっかりミスの例」 ・書類を読みながら歩いていてぶつかってしまった。 ・突然、携帯がかかってきてそれに気をとられてしまい、ぶつ かってしまった。 「確認ミス」 ・カーブミラーを見ないで曲がってしまいぶつかってしまった。 ・足音に注意して確認はしたつもりだったが、ぶつかってしま った。
●たとえば、「直角」での出合頭事故を防ぐには
建築物でのヒューマンエラー、事故を防ぐには、大きく、2つある。
一つは、人の側の自己管理力に頼る方策である。 「直角」では、こんな事故が起こりやすい、したがって、こんな注意をするとよい、ということを知識として持つことと、自分がエラー、事故に関してどういう自己管理ができるかを自覚し、必要に応じて実行することである。これが機能するためには、ヒヤリハット体験の共有や、折に触れての研修(座学や実習体験)が頼りとなる。 しかし、個人的な努力だけによるエラー、事故防止には限界がある。
そこで、もう一つ、エラー、事故にならないような環境設計を考えることになる。 段差や階段などの上下の直角である垂直に関しては、バリアーフリーの設計思想がゆきわたるようになってかなり改善されてきたが、廊下などの平面の直角は相変わらずである。 元気はつらつな子どもが駆け回る学校や、歩行者や移動式担架など雑多なものが移動する病院などでの出合頭の衝突は、ただちに事故につながってしまうことがあるだけに、もっと真剣に考えるべきではないだろうか。 バリアーフリー化が無理なら、せめて、カーブミラーを設置するか、図2に示したような各種の表示によるガイドが必要となる。 1 2 *図2 パワーポイント 4 5
●使いやすさと事故防止とデザイン性
「直角」を例にとって、建物物におけるエラー、事故について考えてみた。「直角」以外にも、ドアーやトイレや浴室などにも、エラー、事故の種はたくさんある。
しかも、公共建築などでは、それを利用するかなりの人が、はじめてのことが多い。熟知によるエラー、事故回避を期待できないだけに、エラー、事故防止には格段の配慮が必要である。 ところで、建物に限らないが、人工物の設計の基本的な観点には、使いやすさと事故防止とデザイン性の3つがある。
この3つがうまく調和がとれていればよいのだが、しばしば葛藤を起こしてしまうことがある。
ある高名な建築家が設計したびっくり仰天の会議場(デザイン性はある)でトイレが少なくて困っているという話(使いにくい)、あるいは、教室間の移動がしにくくて困っている大学の建築物の話を聞いたことがある。自分でも、寿司屋の入口で「足もとにご注意ください」と店員がいつも注意するところで結局つまずいてしまったこともある(安全性の問題)。
建築家がどのような考えで設計図を描くのか知るよしもないが、少なくとも、奇をてらい過ぎるデザインを競うのはやめにしてほしいものである。図3が逆三角形になっているのは、そのことを訴えたいためである。
●3つのタイプのヒューマンエラー
ヒューマンエラーの分類の仕方には、いろいろあるが、ここでは、我々が何かをするときに従っている「計画(plan)-実行(do)-確認(see)サイクル」の各段階で発生する3つのエラーを想定した話をしてみる。 1 2 ***図1 パワーポイント 4 5 「思い込みエラー(ミステイク)」とは、限定された手がかりだけに基づいて誤った状況認識をしてしまうことである。さまざまな勘違いや迷子がその例である。 「うっかりミス」は、目標としたこと/決められていることとは違ったことをしてしまう/しなかったエラーである。段差でのつまずきや鍵の締め忘れなどである。 「確認ミス」とは、当初の目標にあった行為がきちんとできているかどうかの確認をしなかったり、誤った確認をしてしまうことである。校正ミスなどである。
●たとえば、「直角」で想定されるエラー
建築物には「直角」が実に多い。段差がその一つ。もう一つの直角は、廊下である。いずれもエラー、事故を誘発する。 直角の廊下での出合頭のぶつかり事故を例にとれば、前述の3つのヒューマンエラーは次のようになる。 「思い込みエラーの例」 ・夜なので誰も来ないはずとの思い込みで歩く速度をゆるめな かったためぶつかってしまった。 ・前を行く人が曲がったので大丈夫と思い込んで曲がったら、 あやうくぶつかるところだった。 「うっかりミスの例」 ・書類を読みながら歩いていてぶつかってしまった。 ・突然、携帯がかかってきてそれに気をとられてしまい、ぶつ かってしまった。 「確認ミス」 ・カーブミラーを見ないで曲がってしまいぶつかってしまった。 ・足音に注意して確認はしたつもりだったが、ぶつかってしま った。
●たとえば、「直角」での出合頭事故を防ぐには
建築物でのヒューマンエラー、事故を防ぐには、大きく、2つある。
一つは、人の側の自己管理力に頼る方策である。 「直角」では、こんな事故が起こりやすい、したがって、こんな注意をするとよい、ということを知識として持つことと、自分がエラー、事故に関してどういう自己管理ができるかを自覚し、必要に応じて実行することである。これが機能するためには、ヒヤリハット体験の共有や、折に触れての研修(座学や実習体験)が頼りとなる。 しかし、個人的な努力だけによるエラー、事故防止には限界がある。
そこで、もう一つ、エラー、事故にならないような環境設計を考えることになる。 段差や階段などの上下の直角である垂直に関しては、バリアーフリーの設計思想がゆきわたるようになってかなり改善されてきたが、廊下などの平面の直角は相変わらずである。 元気はつらつな子どもが駆け回る学校や、歩行者や移動式担架など雑多なものが移動する病院などでの出合頭の衝突は、ただちに事故につながってしまうことがあるだけに、もっと真剣に考えるべきではないだろうか。 バリアーフリー化が無理なら、せめて、カーブミラーを設置するか、図2に示したような各種の表示によるガイドが必要となる。 1 2 *図2 パワーポイント 4 5
●使いやすさと事故防止とデザイン性
「直角」を例にとって、建物物におけるエラー、事故について考えてみた。「直角」以外にも、ドアーやトイレや浴室などにも、エラー、事故の種はたくさんある。
しかも、公共建築などでは、それを利用するかなりの人が、はじめてのことが多い。熟知によるエラー、事故回避を期待できないだけに、エラー、事故防止には格段の配慮が必要である。 ところで、建物に限らないが、人工物の設計の基本的な観点には、使いやすさと事故防止とデザイン性の3つがある。
この3つがうまく調和がとれていればよいのだが、しばしば葛藤を起こしてしまうことがある。
ある高名な建築家が設計したびっくり仰天の会議場(デザイン性はある)でトイレが少なくて困っているという話(使いにくい)、あるいは、教室間の移動がしにくくて困っている大学の建築物の話を聞いたことがある。自分でも、寿司屋の入口で「足もとにご注意ください」と店員がいつも注意するところで結局つまずいてしまったこともある(安全性の問題)。
建築家がどのような考えで設計図を描くのか知るよしもないが、少なくとも、奇をてらい過ぎるデザインを競うのはやめにしてほしいものである。図3が逆三角形になっているのは、そのことを訴えたいためである。