Vol.08「死の方程式」はこちら。
またしてもタイトルがいい。原題はBlueprint for Murder(殺人の設計図)。建築家のお話なのである。彼は事業家(典型的な成金。テンガロンハットの男)の妻と関係することで金を引き出し、自分の都市計画を推し進めようとしていた。事業家は計画をせせら笑うのみ。彼を亡き者にして遺産を利用するには、しかし高い壁が待ち受けていた……
成金が出資を断るセリフが泣かせる。
「真の事業家にとって大事なのは名誉じゃない。財布の中味だ。」
なるほどね。そんな彼が若い妻に巨額の遺産を無造作に渡すはずもなく、年金として支給される信託扱いにしている。つまり、建築家としては事業家が“死亡したと判明しない形”で彼を排除しなければならないのだ。死体隠しが、今回のキーポイント。
建築家はパトリック・オニール。村井国夫そっくりの色悪ぶりがなかなか。クラシックファンである彼が、ウェスタンしか聴かない成金の車を運転するときに、思わずチューニングを変えてしまうことでコロンボに不審がられてしまう。
「クラシックとウェスタンじゃ、水と油だ。」
「建築屋と殺人も、だ。」
このあたりの丁々発止もいい。演出はピーター・フォーク自身。成金の前妻に愛玩されてしまうあたり、コロンボをかわいく描いている。成金の前妻が全裸でマッサージをうけながら質問に答えるスタイルは、古畑任三郎の「すべて閣下の仕業」にひきつがれたわけだ。そういえば演じた三田和代とジャニス・ペイジは似た雰囲気。
建築家は事業家に向かって
「墓石はわたしが設計させてもらうよ」
と吐き捨てる。事実、その墓石こそコンクリートパイル(杭)D-3なのではないかと思わせて……。あとは見てのお楽しみ。
Vol.10「黒のエチュード」につづく。