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「アバター」のストーリーは、乱暴な言い方をすれば蛮族のトップに白人がすえられる、むかしながらのハリウッド的おとぎ話にすぎない。
ベトナムや中東にこれまでアメリカがやってきたことを断罪するような(もちろんそれはネイティブ・アメリカンへの仕打ちも含んでいる)、無邪気な政治映画だともいえる。逆に、そんなおとぎ話や生硬な政治的プロパガンダを成立させるために、ここまで手のかかる仕込みが必要なのか、とも。
生硬、と切って捨てるのはいかがなものか、という向きもあろうかと思う。しかしキャメロンが複雑なのは、未開人(青い猿、と先住民であるナヴァ族を呼ぶなど)を侮蔑するアメリカ海兵隊が実に魅力的に描かれていることでむしろわかる。
もちろんそれは「パブリック・エネミーズ」で、「デリンジャーはシャーリー・テンプルの映画なんか観ない」という名文句をつぶやき、ラストのいちばんおいしいところをさらったスティーブン・ラングが隊長を演じているだけではない。常に汚い言葉を吐き、みずからの野蛮さを誇る“海兵隊魂”が、圧倒的な強さを表現しているからこそ、実は大量殺戮でもあるナヴァの逆襲の正当化にも貢献しているわけだ。
だいたいね、これはどこかで見た展開だと思えば、まったく「エイリアン2」なのに気づかされる。地球人の方がエイリアンとして襲撃にくるあたりがひねってあるだけで。だいたい、ヘリの女性操縦士の性格(とサングラス)までいっしょだしね。
正直、架空の生態系を展開してみせた前半は、驚きはするけれどもちょっと退屈。しかし、重機がうなり、油の匂いがむせかえるような後半のたたみかけは、わたしの好きなキャメロンそのもの。パワードスーツをつけた隊長が両手をあげて威嚇するとき“C’mon Bitch!”と言わないのが不思議なくらい。
およそ日本人好みとは思えないナヴァ族の造形は、ばかでかい身長のためにむしろいじめられてきたであろうキャメロンの意向が反映しているに違いない。ずっと見ていると、ヒロインのネイティリが次第にセクシーに見えてくるあたりはおみごと。モデルは、ドリカムの吉田美和に違いないです。