“日本の警察”シリーズで何度もお世話になっている佐々木譲の直木賞受賞後第一作。普通、北帰行と言えば東北か北海道だけど、いきなりロシアなのは北海道在住者らしいシャレがきいている。
復讐のために来日したロシア人ヒットウーマンと、堅気である旅行業者の道行き。
「ベッドで食事なんて、ハリウッド・スターみたいだわ」
「ロシアではしなかった?」
「ママは許してくれなかった」
「大人になってからは?」
「ベッドはそういうことをする場所じゃなくなった」
こんな小粋な会話があるかと思えば、敵役であるやくざの残虐性を強調するためか、わたしでもこれは余計じゃないかと思うようなシーンもあり、その調合の具合がどうも……
「ぴったりしよう」
というプロポーズは確かに素敵。でもそのためにある事情(バレバレです)をヒットウーマンに仕込むのはいかがなものか。さる筋から、抗議はこなかったっすか?
道警シリーズが少し“やわ”になってきたから、ノワール系に軸をうつした事情はわかるんだけど……