「野望篇」はこちら。
さて前回は欠点ばかりあげつらったけれど、今回はよいしょしまくりますよ。
・“動く壁”であるSPを、国家転覆計画(官僚たちが意図したものがそうではなかったことにあとで気づかされますが)を防ぐ担い手に設定するのは無理がある……と思ったら、『国会議事堂内で唯一武器を携行できる存在』という特性を活かしたのはみごと(衛視も無理。彼らは警察官ではなくて国会職員だから)。
・他の刑事ドラマでは公安は暗いキャラでおなじみなのに、春田(「めんどくせぇええ」)純一と野間口徹(「ゼロの焦点」のあの人)という味のあるキャスティングで、実は誰よりも国を憂えている“現場の人”になっているのはうまい。
・国会を見学に来ている女の子がテディベアを持っているのを見て「お嬢ちゃん、テディベアのテディって、アメリカの大統領(セオドア・ルーズベルト)のことなんだよ」とテロリストに言わせるあたりもにくい。子どもから熊を奪い取った彼は、アメリカ大統領の象徴を日本の国会議事堂に飾るのである。
・神経症的な連中が多く出てくるドラマのなかで、陽気な殺人者であるリバプール・クリーニングが出てこないのはつらいなあ、と思ったらラストでっ!
・何度も何度も描かれた井上の両親が殺害された場面。そこにどうして尾形がいたのかに、ちゃんとした理由が用意されているのは周到。
・周到さは国会内での描写にも及んでいて、四係がかろうじて小休止できたのが、警視庁はおそらく目の敵にしているだろう日本共産党の記者クラブ(笑)。
……すべてが終わり、堤真一が目をつぶるシーンから岡田准一が目を開けるシーンにかわってエンドロール開始。岡田演じる井上が、尾形の意志を(それは現場の人間としてのプライドを意味するのかもしれない)継承することを暗示してドラマ終了。
とても満足できたのは、「日本の警察」にこだわってきたからだけではないですよ。まだ見ていない人はぜひ。そして最初から一気にどうぞ。
その54「地の底のヤマ」につづく。