TVシリーズ篇はこちら。
映画版は二部作になっていて、それぞれ「野望篇」と「革命篇」。あいだにTVスペシャルの「革命前日」が入る。
今ごろ見ているお前が言うなよってことですが、テレビシリーズもふくめて最初から見ることをおすすめします。“シンクロ”と呼ばれる主人公の井上(岡田准一)の能力を、なんの予備知識もなく受けいれるのはしんどいし、シリアスに走る二部作のあいだに、小休止ともいえる「革命前日」をはさんでいるのは気が利いているので(岡田と真木よう子が仏像見学するシーンは爆笑ですよ)。
批判もいろいろあるようだけれど、わたしは一気に拝見してとても満足した。確かに欠点はある。このドラマに関してわたしは最終視聴者だろうからネタバレ全開でいくと
・井上の上司である尾形(堤真一)の革命への動機が、やはり私怨でしかないのはつらい
・そのために若手の官僚たちと与党幹事長(香川照之)に裏の計画を発動されてしまうのはいいとしても、彼らの理想の国家像がどうにも陳腐(ったく維新だの決起だの)
・SPの多くが尾形に心酔し、その計画に協力するが、直属の部下である四係だけが同調しないのでは他の連中が納得しないのでは?
・公安は国家転覆を防止するためにあるが、同時に官僚でもあるわけで、内部に相克があることをもっと強調すべきでは
・官僚たちの革命シミュレーションごっこ(解説としてまことに親切)において、自衛隊の存在を「冗談でしょう(笑)」と鼻で笑わせるのは少し苦しい。警視庁だってたかだか東京都警察本部ではないかという反論が聞こえてきそう。
・「野望篇」は、途中から官房長官(蛍雪次朗)をいかに官邸に送り届けるかのストレートなつくりになっていて、むしろこっち方面を押し出した方が評価は高かったはず
・身分詐称をしている人物が所属しているポストを考えると、日本の官僚制度はそこまで腐ってはいないのでは?というかそういうことだけはしっかりしているのでは(笑)
……すべて、小さなことです。金城一紀とフジテレビは、日本において「ダイハード」を成立させてみせると企図したのだろうし、それは確実に達成されました。以下次号。