「三谷幸喜創作を語る」はとても興味深い本だった。これまで、かれの作品を何度も何度もとりあげてきたけれど、本人の言い分をもっと聞くべきだったと(笑)。
もっとも三谷のことなので、多分に韜晦が含まれているだろうし、聞き手へのサービス精神が旺盛すぎる(なにしろ大泉洋と並ぶコメント芸人でもあるわけだから)ために面白おかしく脚色している部分もあるだろう。それも含めて、この本もまた三谷の“作品”として楽しむことができる。聞き手は元ABブラザーズで現在は作家の松野大介。
それでは作品ごとに彼の言い分を。
◆サザエさん
実は当時「サザエさん」の脚本も書いたことがあるんです。でも、ここでもクイズ番組の時みたいに自分がおもしろいと思う方向に筆が走ってしまって……。僕が書いた4本中、3本は作品になってオンエアされたけど、最後の1本は、タラちゃんが筋肉増強剤を使用して筋肉モリモリになってオリンピックに出る、という話。「タラちゃん成長期」ってタイトルだけど、それがプロデューサーの逆鱗にふれて、僕の目の前で台本をバシッ!とゴミ箱に投げ捨てられました。「君はサザエさんの心がわかってない!もう来なくていい」と。
……あははは。有名なエピソードですね。ただし、オンエアされた分は、お宝映像としてフジテレビは有効利用しているので、サザエさんの心よりも有能な脚本家へのサービス精神が今のところ優先しているようだ。
◆「やっぱり猫が好き」
深夜にたまたまテレビをつけたら、すごく僕好みの深夜ドラマをやっていたんですよ。それが『やっぱり猫が好き』(フジテレビ)。なんておもしろいんだろう!と思った。もたいまさこさん、室井滋さん、小林聡美さんの3人で、セットの部屋だけでストーリーが繰り広げられるコメディドラマ。僕が創りたいのはこういうドラマだ!と思ったくらい。
……そうだったのか。ファーストシーズンは三谷幸喜抜きであのドラマはつくられていたのだ。てっきり三谷のコンセプトだと思っていました。PART2につづく。