え、あの、こんなひねりのないストーリーなの……いいじゃん!なにしろ主人公のデッドプール(ライアン・レイノルズ)は
・父親へのコンプレックス解消のためにパワードスーツを着て暴れ回ったり
・コールドスリープから醒めても愛国心を失わない好漢だったり
・変身によって超人的な怪力を得ることに畏れを抱く科学者だったり
・不死であることの不幸を、葉巻をくわえてシニカルにやりすごしたり
は全然しない。自分をミュータントに変えたマッドサイエンティストへの復讐と、愛する高級娼婦(モリーナ・ヴァッカリン)を守る、それだけのためにワイズクラックをたれながしながら動き回る。それだけ。他になんもなし。いさぎいい。
マーベルの諸作に不満なのは、コミックの原作があるからこそ複雑な背景を長々と説明されることだった。でもいちおうX-menシリーズの新作でもあるらしい「デッドプール」は、そんなまどろっこしいことはしない。
しかも、Rレイティングを受けいれたことで残虐描写が許されたことと(脳漿がふっとぶのって久しぶりに見ました)、なによりデッドプールの放つセリフが危ない危ない(笑)。さすが、スタンダップコメディアンの本場です。
主役ふたりの貧乏自慢合戦、本音まるだしでデッドプールを助けようともしない“友人”(彼がいきなり最後の決戦に参加したらかえってしらけただろう)。ハリウッドをなめちゃいけないんだな。観客みんなを泣かせるであろうヒロインの愛のセリフが、めちゃめちゃな下ネタなのにも爆笑。
なにより、デッドプール(死の賭け、という意)が観客に常に話しかける設定がすばらしい。だからヒュー・ジャックマンの写真があんなことに使われたり、
「名前は何にするかな、キャプテン・デッドプールってのはどうだ?だめだな」
なんてギャグも生きてくる。
いやもちろん例によってCGはすごいし、20世紀FOXだから「タイタニック」ばりのスペクタクルもある。「ミスター・サンドマン」やシカゴ、シンニード・オコナーのネタで笑わせ、そしてなんと主人公のお気に入りの曲がとんでもないやつだったりするサービスも満点。くわえてラストが……あ、これはマーベルの映画を観ている人なら想像つきそうだからないしょにしておきましょう。必見!
2作目につづく!