そうじゃないかとは思ってました。公開1週目よりも2週目3週目の興行成績がはねあがる展開、アメリカでの圧倒的な人気……ひょっとして、ひょっとして「ズートピア」ってめちゃめちゃ面白いんじゃないのか。
山形から酒田への帰路。フォーラム東根で見るのにちょうどいい時間の作品は「ズートピア」だけ。うーん、でも五十代の男がひとりでディズニーってのもなあ。
ううううう。見終わってつくづく思う。どうしてもっとみんなこの映画をすすめてくれなかったんだっ!あやうく見逃すところだったじゃないか。
いやー面白かった。ピクサーのブランドだと一目散に駆けつけるくせに、ディズニーというだけでなめてちゃいけない時代になってたんだなあ。考えてみればどっちもジョン・ラセターがトップだもんな。食わず嫌いはいけません。
人間が存在しない世界。動物は進化のはてに肉食動物と草食動物が共存する理想社会を形成していた。その中心がズートピア。日本中で5万人くらいが「動楽園」と訳したと思います。うさぎのジュディは、子どものころからの夢、警察官となってズートピアに赴き、ある事件にまきこまれる……
スモールタウンから都会に出る少女。心に傷を負いながら、世知に長けた探偵。暗躍するマフィアや腐敗する権力など、アメリカン・ハードボイルドな展開。種(しゅ)が違うことを認め合おうという設定。どれをとっても目新しいものはない。
でも練り上げられた脚本や、意外な真犯人(これも定型だけどね)で息もつかせない。ユートピアとは「どこにもない場所」だからこそ、人は(動物だけど)努力しなければならないというテーマもすばらしい。ナマケモノやカワウソの動きなど、徹底して研究されていることがわかる精緻なCGもおみごとです。だいたい、キャラがみんな可愛すぎる!
小ネタがまたいいんだ。ズートピアの闇のボス、ミスター・ビッグ(この名は皮肉)の台詞回しは完全に「ゴッドファーザー」のマーロン・ブランド。うさぎに警官は無理なのかと落ちこむジュディが聴くラジオからはR.E.M.のEverybody Hurtsやエリック・カルメンのAll By Myselfが流れ、隣室から「そんな暗い曲を聴くな!」と抗議される(笑)。
つまりはオトナも子どもも楽しめる仕掛けが満載なのであり、中年男もホッとして映画館を出ることができたのでした。絶対のおすすめ作品。ぜひ。