事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

ひょうたん島航海記PART5

2016-06-16 | アニメ・コミック・ゲーム

PART4はこちら

井上ひさしと山元護久の共作の仕方はとにかく変わっている。

お二人(井上ひさし、山元護久)が、喫茶店でストーリーを話し合い、一回分の話の構成を練り上げると、奇数シーンと偶数シーンとを手分けして書くのです。そして最後はそれらをつなぎ合わせて一回分の台本にする……こんな合作スタイルは前代未聞、これからもたぶんありえないでしょう。

……ありえないですよね(笑)。どれだけ信頼し合っていたか、そして、どれだけ同じくらいの才能に恵まれていたかだ。そして、彼らの姿勢そのものが前代未聞だったようだ。

幸か不幸かお二人は人形劇の表現力を信用しなかったために、ちょうどラジオ番組を作るような気持ちでひょうたん島のせりふを、なんの遠慮もなく書きこんでいったのです。それが、あの饒舌で、ユーモアにあふれた、テンポの速い台本となったのでした。

……なるほど、なるほど。さて、これだけ成功をおさめた「ひょっこりひょうたん島」が、それではなぜ終了したのか。

番組の中でつかった「三等郵便局」という言葉が問題になったのだそうです。その言葉は郵政の世界ではやや差別的なニュアンスを持つらしいのです。ただしお二人はそういう言葉を原稿には書かなかった。その回の担当ディレクターが書き加えた言葉だ、と私に釈明されたのです。

……異説もあるようだが、監督官庁だった郵政省の意向が影響したのは確からしい。ドラマの内でも外でも、大人たちは馬鹿げたやりとりをやっていたわけだ。

山元は早世し、井上ひさしも世を去った。藤村有弘、熊倉一雄もいない今、それでも伝説としてひょっこりひょうたん島は生きている。くたびれた中年男となりはてたわたしも、地球のどこかであのゆかいで破天荒な島が漂流しているのではないかと想像するだけで楽しい。あの番組を見ていたことは、まちがいなく、まちがいなく財産だった。感謝。

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