読んだ人のほとんどが絶讃。きっと年末には各種のランキングで上位に食い込んでくるはず。雑誌連載終了後、十年以上も推敲を重ねた作品だけのことはある。
バブルがはじけ、流されるだけの仕事と酒に日々を消費する建築士。そんな彼に、久方ぶりに心が高ぶる仕事が舞い込み、彼は施主の期待に応えた家を設計し、職業人として、生活者として復活する。しかし、自信作だったその家に、施主一家は引っ越した形跡も見えず、杳として行方がしれない。はたして何があったのか……
横山秀夫の作風として、読者の度肝を抜く“泣ける展開”がまずあって、そこにミステリ的意匠をまとわせるじゃないですか。いろんな人から怒られそうだけれど。
「半落ち」がそうだったし、「64」も、あの公衆電話の存在が気が遠くなるような時間を感じさせてくれた。
今回も、“犯人”の動機はわかる。しかしその“行動”はどうだろう。ミステリとしておよそ納得できるものではないような……うわ、まるで「半落ち」に難癖をつけた林真理子みたいにおれはなってないか。ああはなりたくないんだけどなー。