その7「あしたの君へ」はこちら。
国家試験に合格し、視能訓練士の資格を手にしたにもかかわらず、野宮恭一の就職先は決まらなかった。
後がない状態で面接を受けたのは、北見眼科医院という街の小さな眼科医院。
人の良い院長に拾われた恭一は、凄腕の視能訓練士・広瀬真織、マッチョな男性看護師・剛田剣、カメラが趣味の女性看護師・丘本真衣らと、視機能を守るために働きはじめる。
精緻な機能を持つ「目」を巡る、心温まる連作短編集。
(公式HPより)
久しぶりのお仕事小説。
前作「線は、僕を描く」でさんざっぱら泣かせてくれた砥上裕將の新作。視能訓練士という、なじみのない職業を選んだ若者。新人の彼の1年間は、あらゆる職業人にとってあるあるな出来事の連続。この仕事に自分は向いていないのではないか、先輩たちの足手まといになっているのではないか……わかるなあ。
7.5グラムとは眼球の重さのこと。わたしたちが普通にものを見ていることそれ自体が一種の奇跡であることが伝えられる。
あんなに有名な病気なのに、緑内障とはいまだに不治の病であり、治療はただ進行を遅らせるだけ、という現状にも驚く。
おそらくは意図的に恋愛という要素を排除し、お仕事小説の側面を強調したのだと思います。で、今回もまた泣かせてくれるんだ。視力検査表を利用したデザインもすばらしい。
善人しか出てこない(こんな理想的な職場はなかなかない)なかでここまで読ませるとは。この新人はおそるべしだ。