第26回「篤太夫、再会する」はこちら。
時代劇評論家、春日太一の「大河ドラマの黄金時代」(NHK出版新書)を面白く読んだ。版元が版元だから批判的な話ができないかわりに、大河ドラマでおなじみのスタッフたちが本音を語ってくれているのだ。はじめの頃は演出も一名だけでやっていたとか、馬の数が足りなくて苦労したとか。
そして、原作者たちとけっこうな応酬があったらしい。なんであんな話にしたんだとか。そんなとき、スタッフに村上元三の息子がいたので重宝したんですって(笑)。
そういえば、と思う。近ごろ大河ドラマって原作ものが少なくないですか。この10年では林真理子の「西郷どん」だけ。あとはオリジナルである。
これはどうしたことだろう……おそらく、国民作家がいなくなったからだと思います。歴史小説の重鎮がいなくなった。吉川英治、山本周五郎、山岡荘八のような作家が。
そんなことを思ったのは、この回で静岡藩の中老役で木場勝己が出てきたから。映画「関ヶ原」において司馬遼太郎その人を演じたのがこの役者でした。大好き。
さあいよいよ渋沢栄一が商才を発揮するお話のスタートだ。
武士たちのプライドを慰撫しながら商人たちと協力させるというやり方で利を求める。三井の番頭をイッセー尾形が憎々しげに演じているけれど、遠眼鏡で渋沢栄一をどんな人物か観察しているあたりの小心さがソクーロフの「太陽」における昭和天皇役を想起させてくれてうれしい。
箱館戦争終結。つまりは土方歳三の退場だ。妻の故郷である函館に行ったときに見かけた風景の数々。
写真が残された歴史上の人物のなかで、おそらくもっとも美男子だったのは土方だろう。あ、いろんな人から怒られるのかな。でも五代才助がディーン・フジオカのレベルで、渋沢栄一が吉沢亮クラスの美男子だったなんて誰も思ってないでしょう?そこにこだわったら大河ドラマなんて見ていられないです(笑)。
第28回「篤太夫と八百万の神」につづく。
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